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牛乳をカニクリームコロッケの味に変える…。
そんな驚きの装置が明治大学で開発された。飲食物の味と見た目を変える「TTTV2」(Transform The Taste and Visual appearance)という装置で、開発したのは明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授だ。
ちなみに宮下教授には、編集部では過去に減塩食品の味わいを増強させる“箸型デバイス”について取材している。
(参考記事:減塩食の「味が薄い」を解消! “塩味”を電気刺激で1.5倍にする“箸”を開発…他の味覚もできるのか研究者に聞いた )
「今回のこの装置でどのようにして味と見た目を変えるか?」というと、元の飲食物Aと目標の飲食Bを味覚センサーで測定し、味の差(B-A)を算出。この差を埋める味溶液を作り、元の飲食物Aに噴霧混合しながら目標の飲食物Bの味に近づけていくのだ。また、可食インクの印刷によって見た目も目標の飲食物Bに近づける。
この装置を使えば、例えば牛乳をカニクリームコロッケの味と見た目にすることができるという。やり方は、まず、カニクリームコロッケを粉砕する。
カニクリームコロッケを粉砕する(画像提供:明治大学宮下芳明教授)
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そして、粉砕したカニクリームコロッケの味を測定。
粉砕したカニクリームコロッケを味測定(画像提供:明治大学宮下芳明教授)
フードプリンタで、ホットミルクの上にカニクリームコロッケの写真を印刷。その後、味溶液を噴霧混合する。
なお「苦味溶液に含まれる炭酸カリウムによってpHがアルカリ性となることで、牛乳にもともと含まれているアミン系化合物が揮発し、魚介類・甲殻類の香りを生み出している」という。
牛乳をカニクリームコロッケの味と見た目に変える様子(画像提供:明治大学宮下芳明教授)
出来上がったものはアレルゲン物質を含まないため、甲殻アレルギーの人でも食べることができる。この装置では、他にも、白おにぎりを“梅干しおにぎり”に変えたり、白米を“ちらし寿司”に変えたりすることもできるという。
ちらし寿司の見た目と味に変えた白米(画像提供:明治大学宮下芳明教授)
さらには、エリンギを毒キノコ(ベニテングダケ)と同じ味と見た目にして安全に味わうことももできる。
※ベニテングダケの見た目と味に変えたエリンギ(画像提供:明治大学宮下芳明教授)
とても画期的な装置のように思えるが、この仕組みを利用して将来、どんなことができるようになるのか? 開発者の宮下芳明教授に詳しく話を聞いてみた。
「エリンギ→毒キノコ」はめっちゃおいしい
――なぜこの装置を開発した?
これまで、カメラで撮影した映像をテレビに映すように味センサで記録された味を再現する「味覚メディア」の研究を行ってきました。昨年は遠隔で味を届ける「テレテイスト」を実現するデバイスとして、画面上のシートを舐めることで映像に映っている料理を味わえるTTTV(Taste the TV)を開発しました。これを使うと、たとえば通販でお取り寄せをする前に味見したりすることができるようになりました。CDを注文する前に試聴するような感じです。
ただ、この先には、音楽がただの試聴からそのまま配信になったのと同様に、味自体をダウンロードし本当に食べられる「テレイート」の世界がやってくるはずだと思っています。そのための機器は、台所に置く調理家電のような「調味家電」になるだろうと考えてプロトタイプを作りました。
―― それぞれの味の感想教えて。
〈牛乳→カニクリームコロッケ〉
香りまで含めて完璧に再現されていると思います。
〈白おにぎり→梅干しおにぎり〉
香りはしませんが、これも完璧に梅の味です。9種類の梅干しのデータがあるので、その味比べも可能です。
〈白米→ちらし寿司〉
ビジュアルがあるとないとではかなり印象が違いますが、酸味・甘味・旨味・塩味のハーモニーでおいしくいただけます。酸味にクエン酸でなく酢酸を使えば、噴霧してる物質的にも酢飯と同じになっちゃいます。
〈エリンギ→毒キノコ〉
これ、めっちゃおいしいです。毒キノコの標本から味を取得しましたが、イボテン酸(毒)のおかげですごい旨味数値でした。生のままで、さながら料理のような味がします。実際に毒キノコを誤食してしまった専門家に確認してもらい、本当にその味と同じであることを保証してもらいました。
―― どれが目標の味に近かった?
嗅覚の提示にもつながったカニクリームコロッケが最強だと思います。味センサを用いずに、人間のみで同じ味を作ってもらう評価実験を行って、その平均値と味センサに基づく値を比較したところ、ほぼ同じでした。
「プロの味加減が自動で」の実現へ
―― 毒キノコは食べても体に害はない?
毒を再現しているのでなく味のみを再現しているので、まったく害はないです。
―― どんな食べ物が再現しにくい?
嗅覚をともなうものは再現しにくいです。カレーとか松茸、コーヒーは、味は再現できますが香りを伴わないので満足いただけないと思います。
―― 将来的にこの装置でどんなことを目指している?
冒頭に書いたように、台所に置く「調味家電」になることを目指しています。炊飯器でもオーブンでも、いまは「プロの火加減が自動で」をウリにしている製品が台所に並びますが、それに追加機能として「プロの味加減が自動で」が実現するといいなと思います。
―― 今後の課題は?
実はあまりないです。インクジェットプリンターの技術を転用すれば、かなりの混色再現性が高い機器を、かなり安く提供できるはずだと考えています。
目指しているのは、この装置が調味家電となり、プロの味加減を自宅で実現できることだ。私たちの台所に置かれる日はいつ頃になるだろうか。
プライムオンライン編集部
FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。
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