銀座の会員制高級ステーキハウス「ペントハウス」の姉妹店として、「ペントハウス甲州」が山梨県甲府市にある常磐ホテル内に昨秋オープンした。常磐ホテルは“甲府の迎賓館”とも呼ばれ、昭和天皇や皇室の方々が宿泊されたこともある老舗の温泉宿で、囲碁や将棋のタイトル戦が行なわれる場としても有名だ。その敷地内にオープンしたペントハウス甲州は、山梨県のブランド食材である「甲州牛」をじっくり味わえるお店になっている。早速、紹介していこう。
山梨県は富士山やブドウの産地としては有名だが、まだまだ知られていない観光地や食材はいくつもある。甲州牛もその中の一つで、流通量の少なさから大都市でも入手しづらいがために知名度はそれほど高くない。しかし、甲州牛の特徴である特有の甘さと上品な肉質は食べた人を虜にし、地元の高級店で提供される料理を目当てに県外から足を運ぶ人も多くいるそうだ。そのようなニーズの高まりによる後押しもあって、ペントハウス甲州は誕生した。
黒毛和種を山梨の豊かな自然の中で肥育し、肉質が5等級、もしくは4等級に認定されたものが甲州牛として出荷される。甲州牛の特徴は前述したように肉の甘味ととろける脂であり、シンプルな調理法であるステーキとの相性も抜群。同店では、フィレとロースで提供している。
ステーキ単品(150g、200g)でも提供しているが、オススメは山梨の食材が色々と楽しめるコースだ。季節によって変わるスープに始まり、前菜、サラダ、メインのステーキとライス、デザート、コーヒー・紅茶が提供される。また、フィレとロースの相盛りも可能なので、2種類のステーキが楽しめる点もポイントだ。それでは一品ずつ紹介しよう。
季節のスープとして登場したのは、コーンスープ。地元産の甘みの強い品種「ゴールドラッシュ」を使ったもので、濃厚な味わいが口の中に広がる。時期によっては、ナッツの風味が特徴の「バターナッツ」カボチャを使ったポタージュも提供している。
続く前菜は、甲州牛のタタキと鮑煮貝、サーモンマリネロールが登場する。甲州牛のタタキはミョウガと芽ネギ、香味山椒油でさっぱりとしており、鮑煮貝もバルサミコソースでスッキリとした味付けになっている。どちらも素材の味をストレートに感じられる料理だ。
サーモンマリネは山梨県水産技術センターが開発した「富士の介(ふじのすけ)」を使っており、キングサーモンとニジマスを掛け合わせた身は、ほどよい脂乗りと旨味を舌に届けてくれる。サラダも地元産の野菜を基本的に使っており、ロメイン、ピンクロッサ、フリルといったレタスには豆腐とオレンジオイル、クルミオイルを使ったドレッシングを合わせ、アスパラガスやスナップエンドウを使ったサラダにはバーニャカウダとニンジンを使ったドレッシングで色合いも豊かに仕上げている。
カップは大玉トマト「桃太郎」を絞って漉したジュースをジュレとして固めたもので、中にはダイスカットしたものが入っているなど手の込んだ一品になっている。
メインのステーキは、外はカリッと中はジューシーに焼き上げたお肉を、酢カラシ、ニンニク醤油、塩でいただくペントハウスの伝統的なスタイルを踏襲している。違いは先にも触れたように、甲州牛を使っていることだ。
塩で脂の甘味をダイレクトに味わうもよし、ニンニク醤油で香り豊かに味わうもよし、酢カラシでさっぱり味わってもよしとなっており、それぞれを好みで混ぜ合わせてみるのもオススメだ。そしてペントハウス銀座のスタイルと同じく、ご飯と味噌汁に香の物が〆として提供されるので、日本ならではのお米とステーキの組み合わせにきっと満足するはずだ。
ここで一つ追加で紹介しておきたいのが、コースのご飯をガーリックライスに変更できることだ。追加料金は発生するが、ガーリックライスの中にも甲州牛が10gほど使われており、後を引く濃厚なテイストがしっかりと味わえる。さらに同店オリジナルとして、甲州牛の端材を使ったダシスープと3種類の薬味が付くので、ひつまぶしのようにかけて洋風茶漬けのようにしても楽しめる。
今回はオーダーしなかったが、山梨産のワインや日本酒も数多く取り揃えているので、食事と一緒に贅沢な時間を過ごすことができる。牛肉に合う赤ワインは豊富で、「ルバイヤート・ドメーヌ」「あけの2019」「ドメーヌQ ピノ・ノワール」など、個性的なボトルが24種類ほどセラーに並ぶ。日本酒は純米大吟醸や大吟醸といった吟醸酒に加え、「アラン・デュカス スパークリング サケ」といったスパークリングタイプも用意されている。その日の気分や好みをソムリエに伝えれば、甲州牛に合う新しいマリアージュを発見できることだろう。
最後はデザートと生チョコ付きのコーヒーか紅茶が提供される。デザートはマイルドな弾力が特徴の水晶餅に各種ベリーを添えたもので、地元のワイナリーが作っているブドウジュースとともにいただく。水晶餅は海藻由来のアガーを使っているので透き通るような美しさと、プルッとした感触が舌の上で踊り、ベリーとブドウのさわやかな酸味と甘味が濃厚な甲州牛の料理の後にはしっくりとくる。
店長である今村和基氏はさまざまな料理技術を身に着けたシェフであるが、同時に常磐ホテルのパティシエとしても活躍しているので、最後のデザートまで上質な味わいを心ゆくまで堪能できた。
筆者は初めて甲州牛をいただいたが、噂に違わぬ脂の甘味とコク、そして一口噛めばホロリと口中で溶ける柔らかさはまさに絶品。それをダイレクトに味わえるステーキというのもまたよかった。記憶にしっかりと刻まれた至福の時間だった。
ペントハウス甲州
所在地:山梨県甲府市湯村2-5-21
TEL:055-254-5555(予約専用:9時~17時)
席数:28席
営業時間:17時~22時(ラストオーダー:21時)
定休日:水曜日
https://ph-koshu.jp/
ここまでは新規オープンしたお店ということで敷地内にあるペントハウス甲州を紹介したが、甲府の温泉に行くなら泊まりたいと思うのが人情というもの。ここからは常磐ホテルについても紹介しよう。
常磐ホテルのある信玄の湯 湯村温泉は、1200年前に弘法大師が開湯したと伝わる歴史ある温泉で、武田信玄公も湯治のために訪れたと記録されている。その地に常磐ホテルは昭和4年に創業。敷地面積3000坪を誇る日本庭園は美しさで評判となり、昭和天皇が御行幸に訪れるなど、多くの皇室の方々が利用されてきた。また、山口瞳、松本清張、井伏鱒二といった作家も逗留して作品を書き上げていたそうだ。
客室や大浴場も紹介しよう。客室は、和室、和洋室、洋室、デラックスツインがある西館と、和室と和洋室がある東館に分かれている。西館は窓から富士山が見え、東館は南アルプスを窓の外に見ることができる。東館と西館にある和洋室は、和室の中にベッドを導入した部屋で、外国人の利用客をはじめ、足腰に不安がある人にも好評であるとのことだ。とくに東館は大浴場が近いので、こちらの部屋指定で訪れるリピーターも多いのだとか。
大浴場は、男湯、女湯ともに内風呂と露天風呂で構成されている。ここでは男湯の露天風呂を紹介しよう。露天風呂は庭園の中にあるのがポイントで、四季折々の景色を眺めながらゆったりと楽しむことができる。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉となっており、サラリとしてニオイもきつくなく、入りやすい温泉だ。信玄公もこの湯で傷を癒したと思うとロマンを感じずにはいられない。
そして気分よく上がった後はゆっくりと脱衣所を見回してもらいたい。そこには白いボックスがあるはずなので中を開けてみよう。キンキンに冷やされた、ホームランバーとガリガリ君がサービスとして提供されているので、こちらも遠慮なくいただこう。
そして常磐ホテルならではのプレミアムな客室である離れも紹介しよう。離れ客室は庭園をぐるりと囲むように回廊沿いに建てられた数寄屋作りの情緒ある客室だ。
離れは全部で11室あり、1階の部屋には露天風呂も備わっている。その中で常磐ホテルのシンボルにもなっている「松」の名を冠した「貴松亭」と「松風」は昭和天皇がご利用された部屋になっている。
囲碁や将棋の番勝負が行なわれるのは「九重」で、数々のタイトルがここで決まった歴史がある。聞くところによると、棋士が勝負に集中できるよう、畳は3か月前に交換することでニオイを抑え、当日は女性従業員はヒールを履いて音を立てることも禁止されるそうだ。本館2階には熱戦を展示した「名人の小径」があるので、ファンならずとも一度は立ち寄ることをオススメする。
常磐ホテルの魅力はまだまだたくさんあるが、最後にお土産コーナーと最新の設備を紹介しよう。1階のお土産コーナーには、地元の銘菓をはじめ、ワインや日本酒、アメニティとして使われている今治タオルなど、とにかく魅力あふれる品が数多く陳列されている。
その中でも仕入れ担当者である吉田有紀氏がオススメするのは、フレアフードファクトリーの「ぶどうジュース 珠」だ。山梨県内ではここでしか手に入らず、他県ではさらにプレミアが付いて販売されているそうだ。無添加・無調整・無加糖・無加水・無濃縮で作られたジュースは果実本来の美味しさを味わうことができ、高価でも試しに購入した人が次々とリピート買いするほど魅力ある商品だと説明してくれた。こちらも要チェックだ。
最新設備として紹介するのは、本館前の駐車場に設置された2基の「ポルシェ ディスティネーション チャージングステーション」だ。200V・8kWの充電が可能で、ポルシェ・タイカンなど大容量のバッテリーを搭載した高性能電気自動車に対応する優れモノだ。
実は常磐ホテルの代表取締役社長である笹本健次氏は趣味の出版社であるネコ・パブリッシングを創業した人物で、車に対する造詣もとても深い。現在は「AUTOCAR JAPAN」の編集長も兼務しており、その関係で設置に至ったそうだ。
その笹本氏がこだわるのは、本当によいものである“本物”。今回メインに紹介したペントハウス甲州でもそれを感じ取ることができた。甲州牛を使った美味しいステーキが食べたい人はぜひとも訪れてもらいたい。
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