窓の向こうに黒羽刑務所の入り口が見える。栃木県大田原市寒井の「ステーキ万味(まるみ)」。昨年のクリスマス。夕日が沈んだころに、店の駐車場に高級外車が止まり、1人の青年が降りてきた。
青年は店に入ってテーブルに座ると、この店で最も高い栃木産黒毛和牛の270グラムを注文した。カキフライも付けた。計1万1290円。万味では1人でこれだけの金額の食事をする客はめったにいない。
青年はゆっくりと味わうように1時間ほどかけてステーキを平らげた。それから店の窓の向こう側を真剣な表情で見つめた。すっかり暗くなっていたが、スマホを向け写真を撮った。
「懐かしいね」。独り言が聞…
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