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Monday, January 27, 2020

牛乳が試合後の回復を助ける可能性 アイルランドの団体球技女性選手での検討 - スポーツ栄養Web

牛乳がスポーツの試合からの回復を促すとの研究結果がアイルランドから報告された。筋肉機能の低下や心理的ストレスを減少させる可能性があるという。

牛乳が試合後の回復を助ける可能性 アイルランドの団体球技女性選手での検討

研究の対象とプロトコル

この研究の対象は、アイルランドで人気のあるゲーリックフットボール、カモギー(ハーリングの女子版)というチームスポーツの女子選手20名(年齢20.6±3.0歳、身長164.7±5.0cm、体重65.4±9.2kg)。除外基準は、栄養補助食品を使用中または最近の使用、乳糖不耐症、過去3カ月以内の怪我、過去6カ月以内の手術、冠動脈疾患の既往、管理不良な代謝性疾患・呼吸器疾患、妊娠または産褥期。

対象を2群に分け、一方は牛乳500mLを摂取する群、もう一方はエネルギー量をマッチさせた同量の炭水化物飲料を摂取する群とした。群分けの際には、競技におけるポジションと、利き足の膝伸展最大トルク(60度/秒)が群間差を生じないように一致させた。牛乳の主要栄養素は、215kcal、蛋白質17.0g、炭水化物25.5g、脂肪5.0gで、一方の炭水化物飲料は215kcal、蛋白質0.2g、炭水化物53.6g、脂肪0.0g。

一晩の絶食後にベースラインの採血および筋肉痛・筋肉疲労、ストレス、筋肉機能の評価を行い、5日以内に1回目のシミュレートされたチームスポーツ(STG1)に参加。その24時間および48時間後にも採血等を実施。続いて2回目のシミュレートされたチームスポーツ(STG2)に参加し、ベースラインから72時間および96時間後にも採血等を行った。なお、牛乳または炭水化物飲料は、各STG終了後30分以内に摂取させた。

筋肉痛はビジュアルアナログスケール(VAS)、ストレスは(daily analysis of life demands;DALDA)で評価した。筋肉機能は、大腿四頭筋の最大トルク、力発達(rate of force development;RFD)、垂直飛び、反応筋力指数(reactive strength index;RSI)、5mおよび、10m、20mの各スプリントパフォーマンスで評価した。

結果の群間比較

筋肉機能

  • 60度/秒での膝伸展最大トルクはベースラインにおいて、牛乳群156.7±27.3Nm、対照群163.0±14.9Nmで、24時間および48時間時点において牛乳群の低下幅が少なかった(それぞれ、-5.9±6.8 vs -10.0±5.8%、-4.5±8.6 vs -9.3±7.8%)。72時間、96時間時点は群間差がなかった。
  • 60度/秒での膝屈曲最大トルクはベースラインにおいて、同順に81.4±9.3Nm、81.7±11.2Nmであり、24時間、48時間、72時間時点において牛乳群の低下幅が少なかった(それぞれ、-4.2±13.7 vs -1.3±7.8%、-4.7±12.4 vs -14.1±13.5%、-2.2±13.8 vs -10.6±15.8%)。96時間時点は群間差がなかった。
  • 180度/秒での膝伸展最大トルクはベースラインにおいて、牛乳群106.5±19.8Nm、対照群113.0±11.9Nmであり、すべての時点で群間差がなかった。
  • 180度/秒での膝屈曲最大トルクはベースラインにおいて、67.8±11.7Nm、66.9±11.3Nmであり、48時間時点では牛乳群の低下幅が少なく(-3.0±2.8 vs -8.9±6.3%)、その他の時点では群間差がなかった。
  • RFDはベースラインにおいて牛乳群429.2±125.2Nm/秒、対照群448.1±151.9Nm/秒、垂直飛びはベースラインにおいて25.8±4.5cm、27.7±10.6cmであり、いずれもすべての時点で群間差がなかった。
  • RSIはベースラインにおいて、105.8±17.2cm/秒、113.6±18.3cm/秒であり、24時間、48時間時点においては群間差がなく、72時間時点、96時間時点において牛乳群のほうが低下幅が大きかった(それぞれ、-17.3±10.4 vs -7.2±24.9%、-9.5±10.8 vs -0.3±25.2%)。
  • 5mスプリントパフォーマンスはベースラインにおいて、1.17±0.10秒、1.18±0.04秒であり、24時間、48時間、72時間時点において牛乳群の低下幅が少なかった(それぞれ、-1.4±3.0 vs -3.1±6.3%、-1.5±4.1 vs -3.9±7.0%、-2.3±4.4 vs -5.0±9.5%)。96時間時点は群間差がなかった。
  • 10mスプリントパフォーマンスはベースラインにおいて、2.00±0.10秒、2.04±0.07秒で、24時間時点での群間差はわずかであり、48時間、72時間、96時間時点では牛乳群の低下幅が少なかった(それぞれ、-1.3±3.1 vs -2.8±3.5%、-2.0±2.9 vs -2.6±4.0%、0.7±2.1 vs -1.1±2.4%)。
  • 20mスプリントパフォーマンスはベースラインにおいて、3.47±0.2秒、3.55±0.17秒であり、すべての時点で群間差がなかった。

筋肉痛、疲労感

スクワット中筋肉痛の評価はすべての時点で群間差がなかった。等速性膝屈伸中の筋肉痛は24時間時点において牛乳群のほうが少なく(51.0±7.4 vs 65.5±13.8%)、その他の時点では群間差がなかった。疲労感は72時間時点で牛乳群のほうが軽く(49.0±17.9 vs 60.0±19.4%)、その他の時点では群間差がなかった。

ストレス

ストレスは24時間、48時間、72時間時点で牛乳群のほうが少なく(それぞれ、11.6±8.9 vs 21.2±11.3%、17.2±14.4 vs 32.0±11.8%、16.8±15.5 vs 29.6±14.6%)、96時間時点では群間差がなかった。

血液検査値

  • クレアチンキナーゼ(CK)はベースラインにおいて牛乳群196.2±130.0U/L、対照群188.6±125.0U/Lであり、すべての時点で群間差がなかった。
  • 高感度C反応蛋白(hsCRP)はベースラインにおいて、1.6±2.0mg/L、1.1±0.6mg/Lであり、2時間、24時間、48時間時点において牛乳群のほうが高く、72時間および96時間時点では群間差がなかった。
  • 脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)はベースラインにおいて、0.6±0.2μmol/L、0.6±0.2μmol/Lであり、24時間時点において牛乳群のほうが高く、その他の時点では群間差がなかった。
  • カルボニル化蛋白質(PC)はベースラインにおいて0.34±0.33nmol/mg、0.27±0.06nmol / mgであり、すべての時点で群間差がなかった。

パフォーマンスへの効果の確認が次のステップ

以上一連の結果から著者らは、「牛乳は最大トルクやスプリントパフォーマンスの低下、ストレスや筋肉痛、疲労感の抑制にプラスの効果を持つと言える一方で、hsCRPやLOOHの増加もみられた。垂直飛びについては効果が明確ではなかった。今後は牛乳によるパフォーマンス向上効果を確認する研究が必要」と考察。そのうえで、「本研究から、牛乳摂取という実用性に富む手法が、チームスポーツに参加する女性アスリートの疲労からの回復に役立つ可能性がある」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Can Milk Affect Recovery from Simulated Team-Sport Match Play?」。〔Nutrients. 2019 Dec 31;12(1)〕

原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養WEB編集部

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