東京・秋葉原に70年以上にわたって愛されてきた小さな店がある。創業以来、売りは牛乳一本。それなのに朝6時半の開店直後から客足が途絶えることはない。若者や外国人観光客も次々と立ち寄っては、その場で牛乳を立ち飲みしていく。何が人をひきつけるのだろう。
複数の路線が乗り入れるJR秋葉原駅の3階に位置する総武線ホーム(5番線、6番線)に、ミルクスタンド「酪(らく)」の二つの店舗がある。どちらもわずか3坪(約9・9平方メートル)ほどの広さで、店先には値札がずらり。電車が駅に着く度に人が流れ込んでくる。
「きんたろう牛乳、1本」「こっちはコーヒー牛乳ね」。注文とほぼ同時に、店員が冷蔵ケースから瓶入りの牛乳を取り出し、素早くプラスチック製のふたを外していく。値段は1本180円前後だ。
常連客が多いのだろう。客の動きにも無駄がない。ぐいっと一気に飲み干し、店先から離れていく。わずか数十秒。流れるようなやり取りに圧倒された。
「ここでは早さが勝負です。お客様の多くは次の電車が来るまでのわずかな時間で牛乳を買ってくれる。待たせるわけにはいきません」。手際がいい女性店員がそう教えてくれた。2011年3月の東日本大震災直後から働くベテランだ。
確かに、ぱっと飲める気軽さはあるだろう。しかし、それだけでここまで人が集まるものだろうか。
その答えを耳打ちしてくれた人がいた。10年以上、出勤前に必ず「酪」に寄るという70代のパート女性だ。「『酪』に置いてある牛乳は他のと全然違うの」。そして続けた。「ここの瓶入り牛乳を飲んだら、もう紙パックには戻れないわよ」
「酪」が扱っているのは、今やめっきり見る機会が減った瓶入りばかり。瓶は運送費がかさむうえ、割れるリスクもある。多くの牛乳メーカーが輸送に便利な紙パックに切り替えていったのもうなずける。
「ご当地牛乳」が主力商品
しかし、こと「味」に関しては見過ごせない違いがある――。こう強調するのは「酪」を経営する大沢牛乳の大沢一彦社長(76)。「瓶は…
からの記事と詳細 ( 客足が絶えぬ「牛乳の聖地」 秋葉原駅のミルクスタンドが見た70年 - 毎日新聞 )
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