札幌の繁華街で24時間営業をしているステーキ店がある。
お店の名前は「ブラジリアンバル ピッカーニャ(PICANHA)」。
この界隈で”〆ステーキ”を流行らせたお店として地元では知られている。しかも、そのステーキは安くておいしいと評判だ。
店名の由来は看板メニューのランプステーキから
ステーキと言えば真っ先にサーロインを思い浮かべる人が多いかもしれないが、ランプはサーロインに続く腰からお尻にかけての赤身の部位である。サシ(霜降り)が入りにくい一方で、肉質はキメが細かく、肉本来の旨みが凝縮している。
串刺しの肉をテーブルで切り分けるブラジルのBBQ料理「シュラスコ」に使われる部位もこのランプで、ブラジルではサーロインやヒレなどの部位よりランプの方が評判だそうだ。
ブラジルでは、ランプのことを「ピッカーニャ」と呼ぶ。店名の「ピッカーニャ」は、このランプに由来している。その店名通り、料理はブラジリアンスタイルが基本だ。
ピッカーニャでは、肉をブロックで仕入れ、注文を受けてからカットしている。
カットした肉は、かなり強めに塩とコショウの味付けがされている。これがブラジルのスタイルらしい。
ご覧のように、肉の表面は塩とコショウがたっぷり。ステーキの焼き加減は、基本的にはレアである。熱い鉄板にのせて提供されるので、食べる時には丁度良く火が入るからだ。もちろんレアが苦手な人は、頼めばしっかりと焼いてくれる。
モモ肉に続く部位のため、ランプは少し硬い肉質とのイメージを持っていた。しかし、実際に食べてみるとかなりやわらかい。しかも噛めば噛むほど肉本来の旨みを味わえる。
▲ランプステーキ300g(1,650円)
しっかりした味付けは、しょっぱ過ぎることなく、ちょうどいい塩加減。細かく刻んだ酢タマネギの自家製ヴィネグレットソース(110円)をかけると、さらに肉の味が引き立つ。
沖縄出身の社長が脱サラして起業
▲南5条にあった「南5条店」から札幌PARCO8階に移転した「ピッカーニャ+PLUS」(提供写真:ピッカーニャ)
ピッカーニャは「南7条店」「琴似店」、そして2021年4月、札幌PARCO8階にオープンした「ピッカーニャ+PLUS」の3店舗を展開している。
南7条店は24時間営業で、昼にはランチ、夜にはステーキにあわせてワインなどのお酒を楽しむ地元の人で賑わうそうだ。
現在、新型コロナウイルスの感染予防のため、
- 厨房とカウンター席の間に透明フィルムを設置
- 席と席の間隔を空ける
- 案内する席の順番を考えて、密にならないようにする
- スタッフは全員マスク着用
- お客様にも手指の消毒をお願いする
などの対策が行われている。今後、席に座ったまま注文や会計ができるモバイルのシステムも導入する予定だそうだ。
社長の儀間さんにピッカーニャがオープンするまでの経緯を伺った。
──お店を開く前は何をされていたんですか?
儀間さん(以下敬称略):僕はもともと沖縄の出身で、沖縄の大学を卒業して本州で不動産会社の営業をしていたんです。その時に、たまたま入った東京のステーキ店がとても安くて感動するほどおいしくて、そのお店で修業するために不動産会社を退職しました。
──サラリーマンを辞めて飲食業界に入ることに不安はなかったですか?
儀間:正直言うと、自分はなめていたんです。修行させてもらったお店が、週末ともなると30回転以上もする超人気店だったんですけど、この形態でやれば絶対に当たると思っていました。
儀間さんの出身地である沖縄は、米軍基地があることからステーキが身近だそうだ。どのくらい身近かというと、お酒を飲みに出かけたお父さんのお土産と言えば寿司折が思い浮かぶが、儀間さんのお父さんの”おみや”はステーキだったそう。沖縄では、それだけステーキが安く、しかも深夜まで営業しているステーキ店がたくさんあったという。
──なぜ札幌にお店を出そうと思ったのですか?
儀間:本当は沖縄に戻ってお店を開きたかったんですが、 その時には親が札幌にいたんですよ。札幌には、知り合いも全くいなかったので、開店当初は誰もお客様が来なくて苦労しました。
儀間さんがピッカーニャをオープンしたのが2012年。いまでこそステーキ店が増えた札幌だが、当時ステーキの専門店はピッカーニャの他に1店あるだけだったそう。周囲の飲食店の人からは、「夜中にステーキを食べるヤツなんていない。半年もたない」と言われたそうだ。
──評判になったきっかけはなんだったんですか?
儀間:最初はバルのイメージが強くてお酒を飲みにくるお客様ばかりでした。それでも「お肉がおいしいので食べてみませんか」とおすすめしているうちに、徐々にステーキの注文が増えていったんです。
そのお客様の中にテレビ局の人がいて、取材してくれたんです。放送から1カ月は行列ができるほど、たくさんのお客様に来店いただきました。
オリジナル香辛料が中に入ったブラジリアンハンバーグ
儀間さんにランプステーキ以外のおすすめを聞いたら、ブラジリアンハンバーグとの答えが返ってきたので、さっそくオーダー。
かなり高さのある丸い形をしたハンバーグは、熱した鉄板の上で表面を焼いた後、オーブンに入れてじっくりと焼き上げる。
▲ブラジリアンハンバーグ200g(1,100円)
ハンバーグに使用している肉はステーキと同じランプで、お店でひき肉にしている。つなぎを一切使わないランプ100%なので、赤身肉の旨さそのものを味わえる。
ナイフでカットすると、中からはジューシーな肉汁があふれ出てくる。オーブンで焼き上げているため、表面は香ばしく、中はふっくら。肉にはオリジナル香辛料を混ぜ合わせてあるので、ソースなどは必要ない。
安く提供できる理由
今回、いただいたランプステーキも、ブラジリアンハンバーグも、かなりリーズナブル。安さの秘訣を聞いてみた。
──安く提供するための工夫があれば教えてください。
儀間:うちはランプだけでも月に1.5トン、すべての肉を合わせると2~3トンの量を仕入れているんですよ。メーカーと直接取引しているので、安く肉を仕入れることができるんです。
ピッカーニャのメニューには、低カロリー、低脂肪、高たんぱくでヘルシーな食材として注目されている鹿肉と馬肉も並んでいる。鹿肉は、処理が良くないと臭みがでるが、ピッカーニャでは信頼できるルートから仕入れているため臭みがない。馬肉、鹿肉それぞれステーキで味わえるが、馬肉100gと鹿肉100gがセットになった「馬鹿ステーキ」もある。
ピッカーニャはバルなので、ドリンクの種類も充実していて、ステーキに合うお酒も多数用意。肉専用黒ワインもそのひとつだ。「カーニヴォ(CARNIVOR)」というワインで、カーニヴォは肉食動物や肉を食べるのが好きな人のことを意味する。
飲んでみると、程よい渋みと酸味、スムーズな口当たりでステーキを食べた後の口の中をリフレッシュしてくれる。
──今後の目標や計画などあれば聞かせてもらえますか?
儀間:5年後までに30店舗に増やしたいと思っています。そして海外にも出店したいですね。
──具体的な出店の予定はありますか?
儀間:念願だった沖縄にもステーキ店を出す予定で、すでにスタッフの確保もできています。しかし、新型コロナウイルスの関係で店舗の物件を探しに行けずにいる状態です。新型コロナウイルスが収まったら出店します。
人手不足などの理由から、ファミリーレストランやコンビニでは24時間営業を見直す動きもある。そんな時代の流れにあって、ピッカーニャも従業員の確保が大変ではないのか伺ってみたら、意外に苦労していないそう。その理由は24時間営業のため、好きな時間や空いた時間に働きたい人が集まるからだという。
ピッカーニャのステーキを食べたくなったら
筆者は、胃カメラの検査で医者から胃袋が小さいと指摘されたことがあるぐらいの小食である。それが今回はランプステーキ300gとハンバーグ200g、合わせて500gを完食できた。なぜかというと脂身の少ない赤身のランプだからで、来店客に女性が多いというのも納得である。
ぜひ札幌に立ち寄った際はピッカーニャに足を運んでほしい。24時間いつでも、熱々のステーキやハンバーグが待っている。
お店情報
ブラジリアンバル ピッカーニャ南7条店
電話:011-512-7722
営業時間:24時間
定休日:年中無休
ブラジリアンバル ピッカーニャ琴似店
住所:札幌市西区琴似1条3丁目3-7 TM-23ビル1F
電話:011-688-9245
営業時間:11:00~22:00
定休日:年中無休
ピッカーニャ+PLUS
住所:北海道札幌市中央区南1条西3丁目3 札幌PARCO8階
電話:011-206-9411
営業時間:11:00~22:45
定休日:札幌PARCOの休館日に準ずる
書いた人:都良
生まれも育ちも北海道で、半世紀以上生きてます。「北海道フードマイスター」「北海道観光マスター」の資格を持ち、「自称」北海道の食と観光の専門家。暇な時には農家さんの手伝いもしていて、農業も大好きです。本業はフリーのWEBライター。ライフワークは障がい者スポーツ。北海道ボッチャ協会の審判員・普及員で、週末には各地で「ボッチャ」の体験会をしています。
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