新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、古代のチーズと呼ばれ、奈良時代に貴族が食べていたといわれる乳製品「蘇(そ)」が脚光を浴びている。学校の一斉休校で給食用牛乳の供給が激減する中、牛乳を煮詰めて簡単に作れる蘇が牛乳の活用法としてSNSを通じて広まったという。奈良では製品として復活させ土産物店や飲食店で提供しているが、注文や問い合わせが相次ぐ事態に店側も驚いている。
(前原彩希)
蘇は牛乳を煮詰めて固形化した乳製品。平安時代の法令集「延喜式(えんぎしき)」などの文献や平城宮跡(奈良市)で出土した木簡から、飛鳥京や平城京で食べられていたことが分かっている。延喜式には、「乳一斗を煮詰めて蘇一升が得られる」との記述があり、奈良時代には貴族を中心に食べられていたようだ。
ゆかりのある奈良では昭和62年、奈良文化財研究所飛鳥資料館(奈良県明日香村)と「西井牧場」(同県橿原市)が復元し、以後、製品化されて県内の土産物店などで販売されている。
奈良市の雑貨カフェ「ことのまあかり」では、単品(税込み280円)のほかにも、鴨肉と栗、蘇の3品をセットにした「須恵器でおつまみ」(同600円)などを提供。3月初旬、ツイッターで「当店は蘇が飲食メニューにございます」と写真付きで発信したところ、桁違いのリツイートがあったという。
店主の生駒あさみさん(41)は「蘇を食べに来る人は以前はたまにしかいなかったのに、反響がすごくて驚いた。蘇をきっかけに、奈良時代に興味を持つ人が増えてくれればうれしい」と語る。
東京・日本橋にある奈良県のアンテナショップ「奈良まほろば館」では、同県葛城市の農事組合法人「ラッテたかまつ」が手がけた「古代の蘇」を取り扱っている。こちらも一斉休校が始まった頃から、商品に関する問い合わせが増えているという。
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March 24, 2020 at 10:00AM
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