東京・有楽町の店舗
2019年12月期決算で、2006年の上場以来初の営業赤字に陥ったペッパーフードサービス<3053>が、不振の原因となった「いきなり!ステーキ」の反撃体制を整えた。
2019年12月末に493店舗あった「いきなり!ステーキ」の店舗を74店舗閉店し、店舗間競合をなくすとともに、新メニューの開発やエリア別のキャンペーンなどに取り組み、既存店の売り上げを向上させるというのがその骨子だ。
これら対策によって2020年12月期の売上高は前年度比9.1%の減収となるものの、営業損益はもちろん経常損益、当期損益すべてで黒字転換を実現するという。果たして思惑通りに事は運ぶのだろうか。同社のこれまでの事業展開を見てみると、これとは別の成長戦略も浮かび上がってくるのだが…。
店舗間競合の緩和で収益改善
ペッパーフードサービスは2020年2月26日に2019年12月期の決算説明会を開き、この中で「いきなり!ステーキ」事業の立て直し策として、2020年12月期中に直営・委託店48店舗、フランチャイズ加盟店26店舗の合わせて74店舗を閉店することを明らかにした。
2019年12月期は、当初の出店計画を引き下げたものの113店舗(うち海外1店舗)を新規出店したことで店舗間競合が激化し、営業赤字に転落した経緯がある。74店舗を閉店することで、競合状態の緩和効果が期待できるだろう。加えて「いきなり!ステーキ」店を、創業事業に近いステーキ専門飲食店のペッパーランチ店に業態変更することも計画しており、競合緩和はさらに進むとみられる。
こうした対策と並行してメニューを、路面店、ロードサイド・レストランコート店、フードコート店で、それぞれの顧客のニーズに合ったものに変更するほか、ウルグアイ産やニュージーランド産、オーストラリア産、和牛などの様々な産地の牛肉によるメニューキャンペーンをエリアごとに実施することで、1年という最短期間での黒字転換を実現するという作戦だ。
【ペッパーフードサービスの業績推移】※単位:億円、2020年12月期は見込み
2018年12月期 | 2019年12月期 | 2020年12月期 | |
売上高 | 635.09 | 675.13 | 614.01 |
営業損益 | 38.63 | △0.71 | 5.82 |
経常損益 | 38.76 | △0.34 | 5.19 |
当期損益 | △1.21 | △27.07 | 0.23 |
カギ握る新業態の開拓・買収
「いきなり!ステーキ」は「炭焼ステーキくに」の半額で量り売りの厚切りステーキを提供する新業態として2013年12月にスタートした。2年8カ月後の2016年8月には店舗数が100店舗に達し、その後出店速度が速まり1年半後の2018年2月には200店舗に。さらに半年後の2018年8月には300店舗に達した。
こうした急激な店舗拡大を見直し、採算性を高めるのが今回の施策だが、同社のこれまでの事業展開を見ると、別の成長戦略も見えてくる。それは新業態の開拓だ。
同社は「いきなり!ステーキ」をはじめ様々な業態を開拓してきた。1985年にレストラン事業でスタートしたあと1987年にステーキレストランを開店し、1994年にはペッパーランチ事業を始めた。
さらに1997年にとんかつ専門店を、2011年にレストランの新業態「太陽の家族くに」を、2013年には牛たん専門店、ハワイアンパンケーキ専門店を開店。そして同じ2013年に現在の主力事業である「いきなり!ステーキ」の開店とつながっていった。
2009年にはモスフードサービスからステファングリル事業を譲り受けるなど新業態買収の経験もある。ペッパーフードサービスが、こうした多くの新業態を導入することで成長してきたことは紛れもない事実。
今後の同社の成長にとって重要な要因は、「いきなり!ステーキ」の立て直しと同時に、「いきなり!ステーキ」と並ぶような新業態の開拓や買収にあると言ってもよさそうだ。
年 | 月 | ペッパーフードサービスの沿革 |
---|---|---|
1985 | 10 | 東京都墨田区に、くに(現ペッパーフードサービス)を設立し、レストラン事業を開始 |
1987 | 11 | ステーキレストラン「ステーキくに」(現・炭焼ステーキくに)両国店を開店 |
1994 | 7 | フランチャイズチェーン店第1号として「ペッパーランチ」大船店を開店し、ペッパーランチ事業を開始 |
1995 | 8 | ペッパーフードサービスに社名を変更 |
1997 | 9 | とんかつ専門店こだわりとんかつ「かつき亭」吾妻橋店を開店 |
2003 | 11 | 韓国ソウル市に海外第1号店「ペッパーランチ」ソウルミョンドン店を開店 |
2006 | 9 | 東京証券取引所マザーズに株式を上場 |
2009 | 9 | モスフードサービスからステファングリル事業を譲受 |
2011 | 6 | レストラン新業態の「太陽の家族くに」蘇我店を開店 |
2013 | 4 | 牛たん専門店の新業態「牛たん 仙台なとり」を開店 |
2013 | 6 | グルメバーガーとハワイアンパンケーキの新業態「アメリカンキッチン」を開店 |
2013 | 9 | ハワイアンパンケーキ専門店の新業態「Ala Moana Cafe」を開店 |
2013 | 12 | 「炭焼ステーキくに」の半額で量り売りの厚切りステーキを提供する新業態「いきなり!ステーキ」を開店 |
2014 | 6 | 国産カルビ専門焼肉店の新業態「いきなり!カルビ」を開店 |
2014 | 12 | 「いきなり!ステーキ」30店舗達成 |
2016 | 8 | 「いきなり!ステーキ」100店舗達成 |
2017 | 5 | 東京証券取引所市場第二部に上場 |
2017 | 8 | 東京証券取引所市場第一部に上場 |
2018 | 2 | 「いきなり!ステーキ」200店舗達成 |
2018 | 8 | 「いきなり!ステーキ」300店舗達成 |
2018 | 11 | 「いきなり!ステーキ」秋田市に出店し、47都道府県に出店達成 |
文:M&A Online編集部
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February 28, 2020 at 03:56AM
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「いきなり!ステーキ」の反撃なるか 最短期間での黒字転換を目指す戦略は - M&A Online
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