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Friday, March 15, 2024

遺伝子組み換え牛で「インスリン入り牛乳」が生産可能に、インスリンが安価に製造できるようになる可能性 - GIGAZINE(ギガジン)

tasisuper.blogspot.com


糖の代謝を調整する機能を持つインスリンは、糖尿病の患者が血糖値をコントロールする上で重要ですが、アメリカなどでは価格の高騰により入手が困難になり、インスリンの自作を目指す人まで出ています。そんなインスリンを含むミルクを、安価かつ大量に生産することができる遺伝子組み換え牛が誕生したことが、報告されました。

Human proinsulin production in the milk of transgenic cattle - Monzani - 2024 - Biotechnology Journal - Wiley Online Library
https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/biot.202300307

Milk to the rescue for diabetics? Illinois project creates first insulin-producing cow | College of Agricultural, Consumer and Environmental Sciences | UIUC
https://aces.illinois.edu/news/milk-rescue-diabetics-illinois-project-creates-first-insulin-producing-cow

Transgenic cows boost human insulin production by 10X
https://newatlas.com/science/cows-low-cost-insulin-production/

人の体内では、インスリンはまず前駆体のタンパクである「プロインスリン」としてすい臓で合成され、分泌される直前にインスリンとなります。また、以前のインスリン製剤は動物の内臓を精製することで生産されていましたが、記事作成時点で現行の注射用インスリンは、ヒトインスリン遺伝子をバクテリアのDNAに組み込むことで生産されており、大きなタンクで培養された細菌が合成したインスリンを精製して製剤にしています。

今回、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のマシュー・B・ウィーラー氏らの研究チームは、プロインスリンをコードするヒトのDNAを牛の胚の細胞に導入して普通の牛の子宮に移植し、トランスジェニック子牛を誕生させました。


こうして誕生した子牛は、成長するとヒトのプロインスリンとインスリンを含むミルクを出すようになりました。直接インスリンを含むミルクが分泌されるようになったのは予想外で、ウィーラー氏は「私たちの目標は、まずプロインスリンを製造し、それを精製してインスリンにすることでした。しかし、トランスジェニック牛は自分でそれをやってのけたのです。彼女は、約3対1の割合で生物学的に活性なインスリンとプロインスリンを精製します。乳腺はまったく不思議なものですね」と話しています。

トランスジェニック牛のミルクには、1リットル当たり数gのインスリンとプロインスリンが含まれていました。この個体は、乳量が普通の牛よりも少なかったため、どれくらいのインスリンが生産できるのかまだ正確にはわかりませんが、研究チームはかなり有望な予測をしています。


ウィーラー氏によると、乳牛がミルク1リットル当たり1gのインスリンを分泌すると仮定し、典型的なホルスタインの乳量である1日40~50リットルに当てはめると、かなりの量のインスリンを生産できるとのこと。

実際に計算してみます。まず、インスリンの1国際単位(IU)は、純粋なインスリン結晶0.0347mgに相当します。科学系ニュースサイト・New Atlasのライターであるポール・マクルーア氏は1型糖尿病患者とのことで、昼食時には速効型インスリンを8~10単位摂取しています。1回の食事に10単位必要だと仮定すると、1リットルの遺伝子組み換えミルクからは昼食2881回分、実に8年分のインスリンが得られることになります。昼食は1日のうち1食に過ぎませんが、それでもかなりの量だということが直感的にわかります。


トランスジェニック牛が世界中の糖尿病患者にインスリンを供給できるようになるには、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認に加えて、効率的な採取および精製システムも必要ですが、その実現にそれほど時間はかからないだろうとウィーラー氏は確信しています。

ウィーラー氏は「イリノイ州やウィスコンシン州の小さな酪農場に匹敵する100頭の牛で、アメリカ人が必要とするインスリンをすべて生産できる未来が既に見えています。牛をもっと増やせば、全世界の分のインスリンを生産するのも夢ではありません」と語りました。

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