全国の指定団体は、飲用向けの生乳価格(乳価)について2022年末に続き、今年8月に期中改定し、再び価格を引き上げることで各乳業メーカーと合意している。
乳価引き上げの背景には酪農経営の悪化がある。JA全農によると、7~9月期の配合飼料供給価格は前期(4~6月期)と比べ、全国全畜種総平均で1トン当たり2000円下がったものの、飼料の高止まりは続く。生産資材全般に高騰は続き、酪農経営は依然として改善されていない。
全国の指定団体に出荷する酪農家の戸数は4月の時点で前年比7%減の1万戸余りとなった。酪農地帯、北海道の調査(5月)でも4822戸と、5000戸を初めて割り込んだ。廃業や離農で酪農家がここまで減る事態は異常だ。
離農が増えれば、生乳生産量の減少につながる。中央酪農会議によると、5月の指定団体の生乳受託量は前年同月比5%減の60万7775トン。離農が相次ぎ、前年を大きく割り込んだ地域が目立った。目に見えて生産基盤の弱体化が進んでいる。
こうした中での再値上げとなる。需給動向は不透明で、現場の厳しい実態を、乳業メーカーや消費者にしっかり理解してもらうことが改めて重要だ。6月の牛乳月間は終わったが、消費拡大に向けた正念場はむしろこれからだ。
北海道の組合長は「乳価は上昇したが、コストアップ分をカバーできていない。家族経営の酪農家は見切りをつけ、大規模な酪農家は離農もできずに追い込まれている。酪農家の減少は地域問題に直結する」と訴える。
食の土台となる生産現場が崩壊すれば農村地域は成り立たなくなり、食料の安定供給は途切れる。農業の危機は、国民の命を支える食料安全保障の危機につながる。
酪農家が手にする乳代からの拠出金で賄う、国産への置き換えなどの販売対策についても、酪農家からは「対策の効果が見えにくい。どう運用されているのかも不透明だ」との声も上がる。一定の情報開示は、拠出金を集める上で責務ではないか。
酪農家が安心して将来の展望を描くためには、生産から販売に至るまでの連携強化と情報共有が欠かせない。離農が進む現場を直視し、生産基盤の弱体化をここで食い止めなくてはならない。
からの記事と詳細 ( 牛乳・乳製品の再値上げ 業界の連携 より強固に - 日本農業新聞 )
https://ift.tt/1QjECKN
No comments:
Post a Comment