6月は「牛乳月間」って知っていますか?
学校給食でもおなじみの牛乳ですが、いま酪農家が次々と廃業してしまう危機に直面しています。何が起きているのか。「日本の酪農発祥の地」とされる千葉で開かれた牛乳のイベントを訪ね、その背景を探りました。
(首都圏局記者・瀧川修平)
千葉みなとに牛がやってきた!
6月3日と4日に千葉みなとで開かれた「ミルクフェスティバル2023」。県内の酪農家でつくる団体などが主催し、多くの家族連れなどでにぎわいました。
会場で行われていたのは、模型の乳牛での乳搾り体験や、バターづくりなど。本物の乳牛もやってきました。
もっとおいしく牛乳が飲めるようになると思います。本物の牛の乳も搾ってみたいです。
千葉県の牛乳の良さは、新鮮なことです。生産地と消費地が近いため、朝搾った牛乳が翌朝にはスーパーの店頭に並びます。北海道などの遠方だと、こうはいきません。
酪農家が厳しい状況に置かれているので、少しでも消費を拡大してもらえればと思います。
酪農家の廃業で牛乳がピンチ!
酪農家を悩ませているのは、飼料価格の高騰と、牛乳の消費量の落ち込みです。
生乳1キロあたりの原価は一昨年度と比べて30円上昇しましたが、生乳1キロの出荷価格は20円しか上がっておらず、酪農家の経営を圧迫しています。
また、新型コロナの感染拡大をきっかけに牛乳の需要が減少しましたが、感染対策が緩和された現在も需要は回復していません。
2021年の年末には、乳業メーカーや酪農家でつくる業界団体「Jミルク」が、「年末年始に5000トンの生乳が廃棄される可能性がある」という試算を発表したことで話題になりました。
こうした状況の中で、相次いでいるのが酪農家の廃業です。
千葉県内で乳牛を飼育している農家の数は、平成30年から令和4年までの5年間に、611戸から453戸にまで減少。およそ4分の1が廃業したということです。
「牛乳を飲んでほしい」
イベントを主催した酪農家の1人、西岡美千代さんに話を聞きました。西岡さんは四街道市で10年以上酪農を営んでいます。
いまの酪農家が置かれた現状を教えてください。
コロナ禍やウクライナ情勢で、牛乳が飲まれなくなったり、飼料価格が高騰したりして、酪農家は苦しい状況になっています。牛乳が飲まれないと価格も上がらなくなっていまい、収入が増えないので続けていけない酪農家の方が増えてしまいます。
どうすれば酪農家の支援になるのでしょうか。
牛乳が余っていることが問題になっています。でも、消費者の方が飲んでくれれば解決することができます。牛乳を将来の大切な食料として、みなさんに消費に協力していただきたいと思います。
酪農の難しさはどのようなところにありますか。
牛が牛乳を出してくれるまで、3年かかるんです。また、生きものを飼っているというのもあって、簡単に牛乳の生産量を増やしたり、減らしたりすることは難しいです。
どんな人に牛乳を飲んでほしいですか?
成長に必要なお子さんもそうですが、高齢者の方も骨粗しょう症の予防にもなったりするので、できれば1日コップ1杯は飲んでほしいと思います。
日本酪農発祥の地は“千葉”
牛乳といえば思い浮かべるのは“北海道”という人が多いかもしれません。しかし、実は「日本の酪農発祥の地」は千葉県だといわれています。
江戸時代、場所は安房地方(現在の千葉県南部)で、8代将軍・徳川吉宗が、1728年にバターを作るためにインド産とされる乳牛3頭を飼わせたのが始まりとされています。
現在、都道府県別で生乳の出荷量は全国6位。かつては北海道に次ぐ2位だったこともあるそうです。
酪農の歴史がある千葉で呼びかけられた「牛乳の消費拡大」。毎年冬は、生乳の生産量が増える一方で需要が少なくなり、特に生乳が余るおそれがあるそうです。今年の冬を乗り越えることができるのか、物価の高騰が続く中で酪農家の苦悩も続きます。
取材後記
中学・高校では毎日1リットル飲んでいたくらい、私にとって牛乳は身近なものでした。しかし、今回取材するまで生乳が余っている問題や、酪農家の苦悩に十分目を向けられていなかったことに気づきました。
牛乳に限らず、日常の中で何気なく触れるものにも課題や苦悩が隠れているかもしれないという視点を持つことを、忘れないようにしたいと思いました。
からの記事と詳細 ( “牛乳が余ってる” 廃業相次ぎ酪農家が消費拡大を訴え 千葉 - nhk.or.jp )
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