大手乳業メーカーが、11月に牛乳や乳製品を値上げしました。高騰する生産コストの一部を価格に反映し、生乳の生産基盤を守るための苦肉の策ですが、需給が緩和する中での値上げには不安要素もあります。値上げの背景には、どのような課題があるのでしょうか。(記事は11月26日付掲載。新たに動画を加えました)
Q どうして値上げしたの?
A 生乳の生産コストが高騰し、酪農家の経営状況が悪化していることが背景にあります。離農も増え、このままでは将来的に生乳を安定供給できなくなるという危機感から、全国の指定生乳生産者団体(指定団体)と乳業メーカーが飲用向けを中心とした乳価の引き上げを決めました。
11月からの乳価引き上げを踏まえ、大手の明治、森永乳業、雪印メグミルクの3社が牛乳や乳製品の価格を改定しました。改定率は最大でおおむね10%前後となっています。
Q 実際に店頭価格は上がっているの?
A 値上げしたのはメーカーからの出荷・希望小売価格のため、店頭価格への反映は現在のところ、まちまちのようです。大手3社以外のメーカーには、消費の落ち込みを懸念して値上げを先送りするケースもあります。
店頭価格を上げた店舗でも、「値上げ幅は20~50円とばらつきがある」(大手乳業メーカー幹部)のが現状です。あらゆる商品の値上げで消費者の節約志向は強まっており、購入頻度の高い牛乳などの値上げには、スーパーも慎重になっているようです。
Q 消費への影響はどうなるのかな?
A 長引く新型コロナウイルス禍の影響や節約志向の強まりなどで、牛乳の消費量は低調に推移しています。
Jミルクが公表する2022年度の需給見通し(9月末時点)では、実質的な消費量に当たる牛乳類の生産量を前年比3・1%減の約449万キロリットルと予測。11月以降の牛乳乳製品の値上げも踏まえ、前回の見通しから2・6ポイント下方修正しました。
値上げによって牛乳消費が落ち込めば、バターや脱脂粉乳など保存の利く乳製品の加工を増やさざるを得ず、ようやく減り始めた在庫が再び増えてしまう可能性があります。
Jミルクは「年末年始を始めとした学校給食向けの牛乳が休止する時期の需給緩和は、昨年を上回る水準になる可能性もある」と危機感を示しています。
Q 何とかして消費を盛り上げたいね。
A 値上げによる消費への影響を回避しようと、生産者団体や乳業メーカーなどは、あの手この手の販促企画を展開しています。
中でも期待が高まっているのが、国産の生乳を使ったナチュラルチーズの消費拡大です。チーズ人気の高まりや輸入品の価格高騰もあり、国産への注目度が上昇。乳業メーカーは、料理用やつまみ向けなど、さまざまな新商品を相次いで発売しています。
酪農のファンを増やすことも有効です。生産者団体はイベントや交流サイト(SNS)を活用したキャンペーンなどに力を入れています。
消費を盛り上げるには、魅力的な商品開発やメニュー提案、酪農の応援団づくりが鍵になると言えそうです。
からの記事と詳細 ( [「まいちゃん」のニュース教えて!]牛乳なぜ値上げ?(動画あり) - 日本農業新聞 )
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