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Tuesday, November 1, 2022

牛乳値上げの背景 酪農危機は食卓の危機 - 日本農業新聞

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 11月から大手乳業各社が牛乳・乳製品を値上げする。消費が低迷する中での値上げだが、飼料高騰や子牛価格の低迷、脱脂粉乳の過剰在庫など複数の危機が同時に酪農家に押し寄せている事態に思いをはせてほしい。酪農危機は食卓に直結する。社会全体の問題として受け止めるべきだ。

 生乳の需給は、飲用向けの最需要期となる9月の家庭消費が鈍く緩和基調は続く。厳しい販売環境の中で11月、牛乳・乳製品の店頭価格が値上げされる。さらに消費が減退すれば年末以降、過去にない規模の処理不可能乳が発生する恐れがある。脱脂粉乳の在庫は5月以降、4カ月連続で減ってはいるが、依然として9万トン台と高止まりする。

 北海道のJA組合長らで構成する北海道農協酪農・畜産対策本部委員会(道酪対)は10月、これまでの増産抑制に加え、さらなる生産抑制へ本年度の生産目標数量を414万4036トンから410万9000トンに下方修正することを決めた。道酪対のJA組合長の大半は酪農経営者だ。

 減産は自身や家族、地域の苦しみに直結するだけに、涙の決断だった。JA組合長は「ただでさえ厳しい経営を余儀なくされる。組合員に減産要請を伝えるのがつらい。心をえぐられる思いだ」「政府や乳業各社は減産の決断を重く捉えてほしい。加工用乳価が上がらなければ地域はもたない」。訴えは切実だ。

 現場では、「数年先も見通せない」、「投資をしてしまい離農もできない」など、追い詰められている酪農家は多い。無駄を省き、堅実な経営を続けてきた酪農家でさえ、今回の危機は「厳しい」「展望が見えない」と口をそろえる。

 全国の生乳生産量は2017年までの15年間、減少傾向にあった。新型コロナ以前はクリスマスを控えて家庭用のバターが不足することもあり、需要期の生乳需給の逼迫(ひっぱく)が課題となった。

 コロナ禍で一転して余剰になったが、生乳生産は簡単に増減できるものではない。かけがえのない「命」が介在していることを忘れてはならない。

 酪農家の戸数がさらに減少すれば、生乳不足になっても対応はできない。酪農の危機は私たちの食卓の危機だ。「生産基盤はもはや維持できない。生き残れる酪農家は何人いるだろうか」と予測をする道内の組合長もいる。

 野村哲郎農相は10月下旬の閣議後会見で、酪農家が最も厳しい状況にあるとの認識を示した。酪農乳業界の対策だけでは現場は持たない。補正予算、来年度予算に加え、中長期的な支援が急務だ。このままでは地域から酪農家が消えてしまう。社会全体で牛乳の値上げの背景を考え、それぞれが行動する時だ。

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