■連載/阿部純子のトレンド探検隊
調理で一番難しい火加減をプログラム化しプロ級の調理を可能にする
今年1月に日本に初上陸した「HESTAN CUE(ヘスタンキュー)」は、テレビ番組で紹介されたこともあり初回限定数が1時間弱で完売した話題の製品。IHヒーターと調理器具が、専用アプリにブルートゥースで連動することで加熱温度、加熱時間を完璧にコントロールし、プロ級の調理を失敗なくできるIoT調理家電だ。現在、日本を含め世界20カ国以上で発売されアジア圏では日本が初となる。
アメリカ国内調理器具トップクラスのシェアを持つ「Meyer(マイヤー)」の最高級調理器具ブランドが「Hestan」。へスタンはカリフォルニア・ナパバレーにワイナリーを造り、おいしいお酒に合うおいしい料理のレシピ開発のためキッチンラボを設立。そこで開発したレシピを世界中の人に楽しんでもらいたいと「ヘスタンキュー」のプロジェクトが2015年にスタートした。
アメリカ本社のキッチンラボでは、Culinary Scientist (カリナリーサイエンティスト)と呼ばれる食の科学者や専属シェフが試作を繰り返し、食材やレシピごとにステンレスの調理器具に最も適した温度帯をデータ化。そのデータ力を基に構築された専用アプリ内のレシピに調理器具が連動することで、プロ級の調理をアシストする。
アプリ内のレシピは全て動画化されており、下ごしらえから盛り付けまで、調理工程ごとに30秒程度で構成。肉や魚を焼くステップのあるレシピには、個体の重量だけでなく、サイズを計測しアプリに入力することで、好みの焼き加減を選択するだけでヘスタンキューが焼き上げてくれる。
昨今、動画レシピはネット上にあふれているが、ヘスタンキューはさらに進化しプログラム化されたレシピを展開する。専用アプリ内では、ミシュラン星付きのシェフや料理研究家などが監修した、焼く・揚げる・煮る・蒸す等の調理方法による約450のレシピを掲載。世界で開発されるレシピがエンドレスに定期的に更新される。
欧米発のレシピがメインでパーティーメニューのような華やかな料理も多いが、調理器具として日々使って生活の中に溶け込んでもらいたいという観点から、日本のユーザーが日常使いできるレシピを拡充しており、有名シェフとのコラボレーションや調理師学校、食品メーカーとの共同開発、料理研究家の監修レシピの作成を進めている。現段階では和食、家庭料理は約40種。今後はプロが考案した出汁の取り方、白米の炊き方、家庭で食べる中華などもレシピに加えていく予定。さらに材料もセットにしたミールキットの販売も検討中とのことだ。
ヘスタンキューは「スマートIHヒーター」(55,000円)と「スマートフライパン」、「スマートソースパン」(各33,000円)のラインナップ。個別の購入が可能だが、アプリ内のレシピと連動して利用するためには、スマートIHヒーターの購入が必要となる。
フライパン、ソースパンの調理器具はマイヤー社が生産し、プロも愛用する最高級品質のオールステンレスの3層構造になっている。調理器具の底面に温度を感知するセンサーがあり、調理中の温度を常にチェック。取手部にブルートゥースが入っていて、アプリと連動して調理中の温度の情報が送信され、アプリで登録されているベストな温度、調理の段取りを指示する。
アプリ連動調理のほか、手動で温度と時間管理ができる「コントロールモード」を搭載。タイマー機能と併用すれば、カレーや肉じゃが、角煮などのほったらかし料理や低温調理も可能だ。
メイン食材とソースを選ぶだけで、お好みの調理ができる「Mix&Match」機能は、メインの食材を選んでアプリ内のレシピを選ぶと、レシピに合うソースを提案してくれる。これらを組み合わせることで自分好みの料理を作ることができる。
【AJの読み】ヘスタンキュー調理体験イベントで使い勝手を試してみた!
今年1月に「ガイアの夜明け」を見て、ヘスタンキューが気になっていたベテラン主婦(笑)のAJ&IM。
IM「すごく興味があって使ってみたいけど、このお値段でしょ。調理器具って、買ってみたものの一度きりで使わなくなるものも少なからずあるからね。購入して失敗した~となったら取返しがつかないわよ」
AJ「公式サイトには、複数人でできる有料のお試しがあるけどやってみる?」
と会話していたある日、東京駅八重洲の野外フードコート「Beeat!!八重洲」でヘスタンキューの調理体験できるイベント情報をキャッチ。ヘスタンキュー体験コース(120分) は「ステーキ&クリスピーサーモン」の調理に飲み放題が付いて2名で5000円。お試しより安いし、2人で一緒に体験できるのでお得(しかも飲み放題付き)。ということで「Beeat!!八重洲」へGO!
テーブルにはヘスタンキューのスマートIHヒーターとスマートフライパン、ステーキとサーモンの食材、調理器具などがセットされ、説明書を見ながら最初に専用アプリをダウンロード。
レシピの中から「NYストリップステーキ」(焼き方はミディアムレア)を選択し、後はレシピに従い(前出の動画参照)、調理を進めていく。
前準備からスタートし、肉が常温に戻されていることをチェック。従来のレシピはグラム表記が基本で、個体によって厚さが異なるため火加減が難しかったが、ヘスタンキューでは素材の厚みを専用のスケールで測り、明確に数値化することで素材に合わせた焼き方を設定する。
肉の厚みをアプリに入力して、スマートIHヒーターの電源をオンにして油を投入。肉の水分をふき取り、塩・こしょうで下味をつけ、フライパンが規定温度に達するまで予熱。いつもの調理だと油だけで長く予熱すると心配になり、つい火加減を弱めてしまうが、ヘスタンキューは現在の温度を感知して時間表示するので、余計な手出しはせずにじっと待機。
指示が出て肉をフライパンへ。調理中、レシピ動画からの「ジュウジュウ」という音とリアルの調理音が重なってジュウジュウハーモニー状態に。裏返して焼いて、ニンニク、ハーブを入れ、油をかけてとすべてアプリの指示通りに行うだけで完成。油や肉汁をかけながら作る様子はプロっぽいとIMもご満悦。焼き上がったあと「肉を休ませる」という指示が。ソースを作るときは肉を休めている間に作ると指示が出ていた。
クリスピーサーモンも同様にアプリの指示通りに調理。アプリには魚の下処理や切り分けなども細かく指示が出ている。イベントでは切り身の状態で用意されているので、下味をつけて調理を開始。皮目から先に焼くが、油を多めに入れて揚げ焼きの状態で調理するので、裏返すと皮がパリパリの状態で、食欲をそそるきつね色に。
NYストリップステーキは赤みを残したミディアムレアが見事に完成。ソースは使わず、塩こしょうだけで素材のおいしさを味わう。きれいな焼き色に仕上がった外面と、やわらかい食感のステーキは、自分で焼いたとは思えないほど最高に美味。
サーモンのグリルは普段から良く作るが、厚みのある鮭だと皮が焦げても中にしっかりと火が入っていないことが多々あった。今回のクリスピーサーモンはその名の通り皮がカリカリで香ばしく、身はしっとりふんわり。これがプロの火加減か!と実感できた。
今回、二人でヘスタンキュー体験してみて気づいた点を挙げてみよう。
〇食材を室温に戻す、使う食材の重量や厚みを把握する、使用する油の量など、有名シェフの素晴らしい料理はその食材に合った方法と火加減で調理することで成立していることが理解できた。料理の心得はなくても、良い食材を最高の状態に仕上げるという点では革新的。
〇初めて使う場合は、調理に加え、アプリ操作の動作が増えるので手間取ってしまい失敗する可能性もある。慣れないうちはレシピを選んだときにスクロールで表示される、材料、調理道具、準備、調理手順に一通り目を通してから調理を始めるのが確実。
〇専用のIHヒーターを使うため、複数口のあるガスやIHのように、焼いているときにソースや添える野菜を作る、サイドディッシュを調理するといった並行した調理ができない。家族など3~4人分を作る場合、ヘスタンキューだけで調理を完結させるには時間がかかる。
〇一部のメニューはおいしく仕上げる秘訣として高温調理となり、特に脂のある肉の場合は油はねが確実なのでエプロン必須。今回のイベントではテーブル調理になるので、参加を希望する際は汚れても問題のない服装で臨むのが無難(※現地では紙エプロンの用意あり)。キッチンで調理するときも焼き調理の場合は油がはねる可能性もあるので、あらかじめキッチンペーパーや新聞紙を周囲に敷いておくなど、焼肉グリルのような感覚で使用した方がいいかもしれない。
ヘスタンキュー調理は温度調整や段取り等をアプリの指示に従い、一番難しい火加減はIoTが手助けしてくれる。とはいえ下準備や、素材を切ったり、裏返したりといった工程は必要なので、手抜き料理とかおまかせ調理とは違い、料理をやっている感がある「調理エクスペリエンス系」家電といえる。
ヘスタンキューを使って日々調理していると火加減や調理工程が把握できるようになり、料理の腕が上がる可能性も大。料理学校で習うような体験ができるのもヘスタンキューの魅力だ。
取材、文/阿部純子、伊藤まさみ
からの記事と詳細 ( 焼き加減が難しいステーキもプロ級の仕上がりに!日本に上陸したIoT調理家電「Hestan Cue」の革新性|@DIME アットダイム - @DIME )
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