料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は小松菜を使った緑鮮やかなポタージュ。牛乳を使わず、素材の味を丸ごと楽しみます。
―― 冷水先生、こんにちは。少しずつ日が長くなってきましたね。
冷水 はい、春の気配を感じる日が多くなってきました。
―― とはいえまだ寒い日もありますから、風邪には注意ですね。
冷水 栄養を取って乗り切りましょうね。
―― そうそう、油断したときに体調を崩しがちですものね。
冷水 今日は何を作りましょうか?
―― やっぱり温かいお料理が食べたいですね。あとは過ぎゆく冬の野菜を味わいたい気分です。小松菜とかホウレン草とか、冬が旬で、すごくおいしそうです。
冷水 温かい小松菜料理……。じゃあポタージュなんてどうですか?
―― 小松菜もポタージュにできるんですか!? 作ったことないです。
冷水 ポタージュにすると緑が鮮やかでとてもきれいですよ。
―― ぜひ食べてみたいです!
冷水 ミキサーがあればポタージュはとっても手軽に作れますので、おすすめです。
―― ポタージュって、響きだけでもうっとりしちゃいます。
冷水 まずは小松菜をざく切りにして、半分にカットしたジャガイモを5mmほどの厚さにスライスしていきます。
―― ジャガイモが加勢するんですね。
冷水 ジャガイモが入ると旨味ととろみが加わるんです。
―― ポタージュってトロトロ感、大事です!
冷水 スライスしたジャガイモは水にさらします。
―― その心は……?
冷水 ジャガイモにはデンプン質が含まれていて、それがトロッとした食感を出してくれるのですが、水にさらさずに使うとデンプン質が多すぎて、ドロドロしたスープになってしまうんです。今日は少し軽めのとろみにしたいので、水にさらしてデンプン質を程よく落とします。
―― なるほど〜。ジャガイモでトロトロ感を調節するんですね。
冷水 では具材を煮ていきましょう。鍋に小松菜とジャガイモ、EXVオリーブオイル、水50mlを入れて、強火にかけます。
―― 水は500mlの間違いじゃないですか!? 50mlってめちゃくちゃ少ないですけど……。
冷水 ふふふ、間違いじゃないですよ、50mlです。
―― こんな申し訳程度の水で野菜を煮ることができるんですか? 私はいつも野菜がひたひたになるくらい水を入れて煮ていました。
冷水 あまりたくさん水を入れると野菜が水っぽくなってしまうんです。オイルと少しの水で蒸し煮にすれば、野菜から水分が出てくるので焦げることはないですし、野菜の味が凝縮されて、おいしいポタージュになるんですよ。
―― 本当だ、蓋(ふた)をしてしばらく火にかけたら、さっきより水分が増えています! これが野菜から出た水分なんですね。すごいなぁ……。
冷水 ポタージュは素材の味を丸ごと楽しむ料理ですからね。
―― 煮る際の水の入れ過ぎには注意ですね。
冷水 ジャガイモに火が通ったら、ここで水を投入です。
―― 凝縮した野菜の味をお水で伸ばすような感じですね。
冷水 はい、大切なのは水を入れるタイミングです。
―― 心得ました!
冷水 水を入れた後は沸くまで中火、その後は蓋を軽くずらして10分ほど煮てください。
―― そろそろミキサーの出番ですね! ちなみにハンドミキサーでも問題ないでしょうか?
冷水 もちろんです。小松菜は筋が多いので、ミキサーにかけても筋が残ってしまいがちです。少し手間ですが、ミキサーにかけたあと、ザルなどでこして筋を取り除きます。
―― 小さなひと手間が大きな仕上がりの変化につながる。この連載で何度も体験してきたことです。
冷水 まあ、優秀な生徒さん(笑)。
―― しかしながら、なんとも美しいグリーンですね。萌黄(もえぎ)色というのでしょうか……、春の若葉のような緑です。
冷水 今日は牛乳を加えないので、この美しい色を存分に楽しめますよ。
―― えっ!? ポタージュに牛乳を使わないんですか? というか、私はポタージュという料理には牛乳がマストだと思っていました……。
冷水 そんなことはないですよ〜。どんな味や質感に仕上げたいかによって、牛乳を使ったり、使わなかったり、自由でいいんです。
―― 衝撃でした……。
冷水 今日は旬の小松菜の風味を存分に味わっていただきたいので、牛乳はナシにしました。その代わりと言ってはなんですが、最後にひとつ、具材を加えます。
―― これは……、なんとも立派なハマグリ!
冷水 はい、ちょっと贅沢(ぜいたく)な気分になれるでしょう? スープをザルでこしたあと、お鍋に戻して温めますが、その時にハマグリを加えて軽く煮て仕上げます。
―― 緑の草原でハマグリがお昼寝しているような……、なんだかすごくほのぼのした感じのスープですね(笑)。おもてなしに出したくなるスープです。
冷水 あまり火を入れすぎるとハマグリの身が縮んでしまうので、口が開いたら器に取って、そこにスープを注いでください。熱いうちに、どうぞ召し上がれ。
―― あれ、小松菜の青臭さを全く感じませんね! ジャガイモの自然な甘さが加わって、爽やかさと優しさが同居したようなスープです。牛乳が入っていない分、軽やかな感じがします。大人のポタージュです。
冷水 ハマグリなしでももちろんおいしいので、気軽に作ってみてくださいね。
小松菜のポタージュ
材料(2~3人分)
-
小松菜
1束
-
ジャガイモ
100g
-
水
450ml
-
ハマグリ
200g(3~4個)
-
EXVオリーブオイル
適量
-
塩
適量
- 小松菜はざく切りにする。ジャガイモは皮をむいて半分に切ってから厚さ5mmにスライスして水にさらす。
- 鍋に小松菜とジャガイモ、EXVオリーブオイルを少々と水50mlを入れ、強火にかける。沸いたら蓋をして、弱火でジャガイモに火が通るまで煮る。
- 2.に水400mlを加え、中火にする。沸いたら蓋を軽くずらして10分ほど煮てからミキサーにかける。ザルでこしたあと鍋に戻して火にかけ、ハマグリを加えて軽く煮る。
- 塩で味を調え、器に盛る。
からの記事と詳細 ( 牛乳は使わない。大人風味の小松菜ポタージュ - 朝日新聞デジタル )
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