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Monday, March 14, 2022

アマゾンが熱視線 まちの牛乳屋さんの超アナログ商法 - 産経ニュース

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宅配する商品の一つの豆腐をチェックする稲美乳販の船山英宣社長=兵庫県稲美町
宅配する商品の一つの豆腐をチェックする稲美乳販の船山英宣社長=兵庫県稲美町

各家庭に牛乳を宅配するまちの牛乳屋さん。細々と営業を続けているところが多いが、兵庫県稲美町の「稲美乳販」は新型コロナウイルス禍の昨年度、約8億円と過去最高の売上高を記録した。牛乳やヨーグルトなどの乳製品だけでなく、米や卵、生鮮食品など幅広く扱い、長年培った宅配ルートとノウハウを駆使して独自の営業を展開。その秘密は、インターネット通販の巨人「アマゾン」の対極をいく「超アナログ」営業にある。

骨の健康チェックで集客

あたり一面に広がる畑。のどかな田園地帯の中に同社の本店はある。敷地内には乳製品などを保管する冷蔵室のほか、米、卵、野菜、果物、豆腐、肉、魚などの食料品や日用雑貨類が並ぶ保管庫も。さしずめスーパーのバックヤードといった風情だ。

「乳製品だけでも十分商売は成り立つんですよ」。船山英宣社長(53)はこう話す。

同社は本店と同県宝塚市の1営業所、広島県の2営業所の4拠点で、中高年層を中心に計約2万6千件の定期購買者を抱える。一定の解約はあるが、減った分を補って余りある新規契約者を獲得している。

それを可能にしているのが4年前から始めた「骨の健康度チェック」イベント。月に10~15回、営業エリア内各地の広場などにブースを出し、買い物客らの骨密度を測定し、数値の悪い客に牛乳を勧める。

稲美乳販が行っているイベント営業「骨の健康度チェック」。多くの新規契約者を獲得できるという(同社提供)
稲美乳販が行っているイベント営業「骨の健康度チェック」。多くの新規契約者を獲得できるという(同社提供)

「試しに毎日牛乳を飲んだ人は2カ月もすると、てきめんに数値が上がっていて、喜んで契約してくれます。途中でやめてしまった人も、久しぶりに測ってみると数値が下がっていて、再契約につながるんです」

定期的に同じ場所でイベントをやっていると、新規客が友人・知人も誘って来てくれるようになり、健康志向の高まりも相まって「おもしろいほど新規契約がとれる」という。

無料の宅配ルートを活用

乳製品だけで採算がとれるということは、その宅配ルートに乗せればほかの商品を無料で宅配できることにもなる。船山社長は早くから乳製品以外の商品も幅広く扱ってきた。

たとえば、限られた店でしか売っていないブランド卵。「買いに行きたいが、出かけるのが大変だから扱ってくれないか」といった客の声を営業スタッフは日々耳にする。そうした「こだわりの逸品」を吟味してラインアップに加える。

一方で、生産者側の声も拾う。「味はいいのに規格外で売れない」という農産品を扱い、地元農家と客との橋渡しを行う。

その販売戦略が究極のアナログだ。牛乳などを配達する際、受け箱にチラシを入れる。客はチラシの申し込み欄に注文を書き込んで受け箱に入れるか、直接同社に電話で注文をする。

コロナ禍に見舞われた令和2年以降、たびたびイベント営業の自粛を余儀なくされたが、定期購買者への電話での「御用聞き」が巣ごもり需要と合致。さらに商品の取り扱い幅が広がり、今では約4千品目を扱っているという。

「こういう営業方法は、日々顔を合わせる地域密着型でないと成り立ちません。お客さんはうちを信頼していろいろなものを注文してくれるんです」

物流は結局「人対人」

誰もがネットで手軽に注文し、安く品物を手に入れられるアマゾンとは対極にあるともいえるアナログ商法だが、実は、同社の宅配網にアマゾンが興味を示したことがある。7年ほど前、第三者の業者を通じ「アマゾンの物流を引き受けないか」と打診を受けたという。

主力商品の牛乳をチェックする稲美乳販の船山英宣社長。絞りたての新鮮な味が人気という=兵庫県稲美町
主力商品の牛乳をチェックする稲美乳販の船山英宣社長。絞りたての新鮮な味が人気という=兵庫県稲美町

この話は結局、立ち消えとなったが、船山社長は「物流というのは、最後は必ず配達員が客の玄関先まで届けなければならない。その点ではアマゾンもうちも同じだが、やはりアプローチは全然違う」と話す。そのアナログに、さらに磨きをかける考えだ。

電球の取り換え、エアコン掃除、草刈りなどを20分500円程度で請け負う便利屋サービス、客の家に出向いて好みの旅行プランを提案する旅行代理業、相続に関する悩み相談…と、かゆいところに手が届くようなサービスを検討中だ。

さらに、「ネットもそこそこ扱える僕らぐらいの年代」が将来、客の主流になるのを見据え、昨年10月、アプリの開発にも着手。アナログを残しつつデジタル対応にも備える。

「採算が合わないサービスもありますが、商売を通じて地域を盛り上げたいんです」。船山社長は、こと地域内においては世界のアマゾンを超える会社にしたいと意気込んでいる。(古野英明)

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