年末年始に懸念された牛乳の大量廃棄。なんとか免れたが、業界団体の予測では3月末から5月にかけても予断を許さない状況が続くという。せっかくの牛乳を捨ててしまうのはあまりにもったいない。どうしたらよいだろう。グラフィックデザイナーのかたわら、これまでに国内外500種類以上を飲んできた“牛乳の伝道師”で、10年以上にわたって魅力をアピールしてきたミルクマイスターⓇ高砂さん(38)に、その活動や思いもあわせて聞いた。【増田博樹/デジタル報道センター】
「牛乳が好きなので会社辞めます」
高砂さんは山形県寒河江市出身。子供の頃から1日1リットル飲む牛乳好きだった。名古屋学芸大学デザイン学科在学中、自分が好きなものをデザインする授業では牛乳のボトル商品のデザインに取り組んだ。その過程で、少子高齢化により牛乳の消費量が減っていることを知った。「好きなものがだんだん飲まれなくなっているのを寂しく感じました。自分が何か牛乳にできることはないかと、その頃から思い始めました」
しかし、卒業後に在籍した広告制作会社の仕事は忙しく、帰宅が朝になることも。消費者が日常生活で手に取る商品をデザインしているのに、オフィスにこもりっぱなしの仕事であることも疑問を感じた。人生このままでいいのか、と思い悩んでいた時、ふと豆乳を飲んでいる自分に気付いた。疲れて何も考えられなかったとはいえ、好きな牛乳を忘れて豆乳を飲んだことは大きなショックだった。
これではいけない。好きなものは何か。やはり牛乳に関わることがしたい。子供の頃に健康を支えてくれた恩返しの気持ちもあった。「上司には『牛乳が好きなので会社辞めます』と話しました。多分、何を言っているか分からなかったでしょう」と笑う。
牛乳をテーマにアニメ映画も製作
会社を辞めて、独立したのは2010年。それから、東京都内でのデザイン会社経営などのかたわら、「ミルクマイスター」として活動してきた。牛乳に関する活動でも最初は本名の「高砂航(わたる)」を使っていたが、何か肩書があった方がよい、と「ミルクマイスター」を名乗った。公的な資格や称号ではなく、自ら名乗っているので、ただ一人の存在だ。
「まず、牛乳っておいしいよね、と軽い入り口になるきっかけを作りたかったんです。牛乳はさまざまな食品に使われており、すごい食材なんだ、ということを知ってほしいとも思いました」
これまでに、牛乳関連の雑貨店の運営(現在は閉店)、酪農家に取材するフリーペーパー「MILK新聞」や牛乳に関するフリーマガジンの発行、本業のデザインのスキルを生かした牛乳関連グッズの制作などに取り組んできた。美術専門学校で牛乳を題材にしたデザインなどを教えもしている。21年8月には、監督、脚本、作画などを自ら手がけたアニメ映画「ミルクのケビン」まで作り、国内3カ所のミニシアターで上映した。
こうしたさまざまな活動が注目され、ここ数年、高砂さんの活動がメディアで紹介されることも増えた。
春は学校休みや生産増 危機再燃か
年末年始の牛乳の大量廃棄危機はなぜ起こったのか。10年代半ばのバター不足を受け、業界は乳牛の頭数などを増やす取り組みを進めて成果が出ていたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴って飲食店などでの需要が減少。これに学校の冬休みが重なって給食向けの需要が消え、供給が需要を大きく上回る事態に陥った。
業界のPRや消費者の協力で乗り切ったものの、生乳の業界団体「Jミルク」(東京都千代田区)は、学校が春休みの年度末から、生乳生産量が季節的に最大となる4~5月に、予断を許さない状況がまた起きるとみている。
「牛乳は太りやすいは誤解」
春にも再び迫るかもしれない廃棄の危機。牛乳の消費を増やそうと活動してきた高砂さんは、多くの人に牛乳を飲んでもらうには、まず、牛…
からの記事と詳細 ( 春にも牛乳廃棄の恐れ ミルクマイスターに聞く楽しい危機回避術 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
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