「ポークステーキ丼(洋風ガーリック)」
松屋
6月29日発売
並630円、ダブル1000円
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/210629.html
これでだいたい把握できる、みたいなメニュー
たとえばあなたに好きなバンドがいたとしましょう。アルバムはもう全部持ってます、ぐらいの。だけど作品がすべて無条件で大好きというわけではなくて、中にはちょっと「どうかな」みたいなアルバムもあるけど、そこを含めて好き、といったところ。
そんなあなたに、誰かが「そのバンドに興味あるんだけど、何から聴いたらいい?」と言ってきたとします。これはなかなか難問です。世間的に評価が高い“代表作”にするか、自分が愛してやまない作品にするか、それともベスト盤か……。
そういった具合で、「これを最初に知れば、彼らのことがだいたいわかる」というものがあるとして、それは何か? なかなか意見が分かれそうですよね。では、松屋で言うとなんでしょうか。6月22日から販売している「ポークステーキ丼」ではないかと思うわけです。自分でもいささかスピード感がある展開のような気がしますが、続けます。
6月29日、松屋の「ポークステーキ丼」に“香味醤油”に続く新ソース“洋風ガーリック”が登場しました。牛ステーキ丼でもおなじみの“洋風ガーリック”ですが、今回、新たなアレンジを加えて、豚肉の旨味をさらに引き出す絶品ソースに仕上げているそう。ビネガーの効いたシャキシャキ野菜(エスカベッシュ)付き。
並630円、ダブルが1000円。7月13日10時まで無料でライス大盛に変更可能です。
というわけで、このポークステーキ丼、とくに今回の洋風ガーリックこそ、松屋のことがよくわかるメニューになっています。それはなぜか。これから説明していきましょう。
松屋の“あるある”を押さえつつ完成度が高い
具体的に、松屋の何がわかるのか。まず、味付けの特徴が理解できます。今回のポークステーキ丼でいうと、ソースですね。松屋の味付けは、基本的に濃いのです。なぜか。ごはんを進ませたいから(だと思います)。
また、ガーリックはどちらかというと効かせますが、匂いがすごい、というところまではいきません。匂いはさせるけれどやり過ぎない、というのが基本的な松屋の流儀といえます。
肉質はどうでしょう。このポークステーキ丼を食べればわかります。松屋の肉は、どのメニューであれ、基本は柔らかいです。固くて噛み切りにくいことは、ほとんどない。これは牛、豚、鶏、どれでもそう。そこに関しては、クオリティーを信頼してもよい。
ただ、量となると「もう少しあってもいいかな?」ぐらいには感じます。「足りねえ……」ではなくて「もう少し」なのがポイントね。もっと増やしたい人は肉の量をダブルにしてね、という姿勢なのでしょう。これはレギュラーメニューでも、期間限定メニューでも見られる傾向です。
以上で、松屋のポイントがわかったかと思います。テイストは基本濃いめ、香りは強いけどやり過ぎない、肉は柔らかいものの量は「もう少し」といったところ。
これらのポイントは、メニューによってよい悪いが分かれます。汁物系のおかずですと、「どうもしょっぱいなあ」となってしまうこともなくはない。ただ、こういうシンプルな丼ものに関しては、かなり有利に働きます。わかりやすくパンチの効いた味わいになるからです。
付け合わせの野菜のエスカベッシュ(Escabeche)についても触れておきましょう。エスカベッシュは、フランスやスペインなどで食べられているマリネというか、南蛮漬けのようなものです。オイルやビネガーなどで漬け汁を作り、魚をメインに漬けることが多いのですが、松屋では野菜オンリー。
これもまた、「松屋の野菜の感じ」なんですよ。「シャキシャキ感があるけれど、水っぽい」感じ。「みずみずしい」と言いたいところですが、ちょっと水っぽい……という雰囲気なんですよね。松屋の生野菜や、サラダ系の何かしらは、だいたいこうなる。しんなりしすぎていないというか、歯ごたえはあるというか。
このエスカベッシュの場合、しっかり味がついているので、ソースが濃いステーキとの相性はよいです。まあ、松屋のメニューは野菜(付け合わせ)がないことが多いのですが、このポークステーキ丼のエスカベッシュは、めずらしく付けただけのことはあり、ビネガーの風味がかなり絶妙です。
このポークステーキ丼は、本当に典型的な松屋の味です。エスカベッシュも含め、「松屋ってこういう料理なのね」と思わせるパターンが網羅されていて、完成度もなかなか高いと。
これで630円なら納得できます。ダブルの1000円は、肉の量が倍増したとはいえ、ちょっと高いかな……と思いますが、そのあたりのコスパ感も、よくも悪くも松屋らしい(=チェーン店らしい)と言えなくもない。
既に発売されている「香味醤油」も悪くないのですが、松屋らしさなら断然こっちでしょう。「松屋らしさ」を楽しみたい人がどれだけいるか、という話なんですけど。
松屋にあまり行かない、あるいは行ったことがない……という人なら、これを食べれば「松屋の味」がだいたいわかるかと思います。一方、松屋に行き慣れている人も、とりあえずで注文してよい完成度です。メニューの“あるある”を押さえつつ完成度が高いので、初心者から上級者(?)まで楽しめる一品ではないでしょうか。
最後に、この記事を読んだ編集部員から、「他に松屋あるあるはないのか?」と聞かれました。うーん。「券売機のタッチパネル、反応遅れがち」とかでしょうか。早く言いたいというほどのものでもないな……。あまりオチていない気もしますが、現場からは以上です。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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