暑い日が続き、連日、日本のどこかで熱中症で亡くなる人が絶えない。コロナなら3密を避け、マスク、手洗いと対策もあるが、熱中症の対策といえば、涼しい部屋から出ない、水分をこまめにとるぐらいしかないから困る。ところが、意外なものが熱中症に効くという。牛乳だ。取材すると、意外な牛乳のすごさがわかった。(サイエンスライター 川口友万) ● 熱中症に強い 体を作る 信州大学の能勢博特任教授によれば、牛乳を飲むことが熱中症対策になるのだという。牛乳に関する情報発信を行っている一般社団法人Jミルクの前田浩史専務理事によれば、その研究が発表されたのはおよそ10年前。 「スポーツ医学の専門家である能勢先生はいかにして効率的に筋肉をつけるかという研究をされていたんですね。その中でお年寄りの方の筋肉を維持するためにどうするかというテーマを扱われたんです」 筋肉が維持できれば血液の循環が良くなり、血液循環が良くなると肝機能が向上する。肝機能の向上により、血液中のアルブミン(水分を保持し、血液中で物質を運搬する成分)が増え、水分が保持されて血液量が増える。その結果、気温の変化などにも対応できるようになる。 「熱中症に対して、対症療法的に水を飲んだり体温を下げたりすることは大事なんですが、それ以前に熱中症に強い体を作らなきゃならないんだという考えがあったわけです」(前田専務理事) 筋肉量が多ければ熱中症になりにくい。ではどうすれば、年を取った人でも簡単に筋肉を増やすことができるのか?
「インターバル速歩という、早歩き3分+ゆっくり歩き3分を1セットとして、それを1日に5回繰り返すトレーニングを被験者にやってもらいました」(前田専務理事) 血液循環にはふくらはぎの筋肉がとても重要なので、その筋肉を鍛えようというわけだ。1日トータル30分のトレーニングを週4日続けてもらい、トレーニング後、1時間以内に牛乳を飲むと有意に足の筋肉が増えることがわかった。自転車運動など高い強度の足腰の運動と牛乳の組み合わせなら、同様の効果がある。数カ月で疲れにくく、熱中症にも強い体になる。 今が暑いのに来年の夏に備えて運動と牛乳ということか?なんだか拍子抜けだと思ったら、「そうではありません」と同次長で農学博士の池上秀二氏。 「スポーツドリンクは水分の吸収は速いのですが、水分やミネラル分が尿としてすぐに外に出てしまいます。ところが牛乳には水分保持機能があるんです。牛乳を飲むと脱水症状を起こしにくい」 良かった、今年の熱中症にも牛乳は使えるのだ。 ● 牛乳を飲むと メタボになりにくい? 牛乳はタンパク質なので、強度の強い運動後に飲めば筋肉がつく。さらにアルブミンの働きで、水分が保持され、熱中症になりにくくする。 さらに池上氏は「牛乳を食習慣として飲む人はメタボにもなりにくいんですよ」として、次のように話す。 「2020年5月、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に21カ国約15万人を対象とした大規模な疫学調査の結果が発表されました。その結果、牛乳や乳製品を多くとっている人は全くとっていない人に比べてメタボが少なく、2型糖尿病と高血圧のリスクも低下することがわかったのです」 牛乳でメタボが減るというのはなぜだろうか。しかも「低脂肪乳と普通の牛乳を飲んでいる人の比較もあって、普通の牛乳の方が効果が高いこともわかりました」(池上氏)というのだ。 乳脂肪が少ない低脂肪乳の方が太らないはずではないか?
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August 28, 2020 at 04:01AM
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