「朝食には牛乳やヨーグルトが欠かせない!」朝の乳製品は便秘予防に効果があるといわれています。しかし、「やっぱり朝がテッパンよね!」と思うことなかれ。便秘予防なら他の食品でも代用が可能です。乳製品は夜飲む、を新常識に変えてしまう「時間栄養学」を紐解いていきましょう。
◆体内時計のしくみ
睡眠や空腹と一緒に語られることの多い「体内時計」。実は「時間栄養学」にも欠かせない要素です。
「体内時計」は生活環境の変化に対応するためのシステムで、体温や血圧、睡眠、運動などの生命活動や心身の健康を管理しています。大きく5つの機能が知られていて、具体的には「日周リズム」「週周リズム」「月周リズム」「年周リズム(季節的リズム)」「90分リズム(超短日リズム)」があります。
例えば「年周リズム」ならば、春夏秋冬の暑さ・寒さに身体が順応することで、上手く生活できるようになっています。この5つのリズムが上手く調和し合って「今」という時間を生きています。
「日周リズム」は人間の感覚では25時間程度の周期です。太陽のリズムは24時間なので狂いが生じやすく、私たちは、朝日を浴びることで1時間分のずれを修正しています。
「日周リズム」は日々の繰り返しなので、ごくたまに「友達に付き合って夜更かし」があっても、朝日を浴びることでリセットすれば大きな問題にはなりません。
ところが、常に生活が乱れている人の場合、乱れたリズムがその人のリズムになってしまっているため「たまには早起きしてみよう」と思っても「早起きするほうが身体によくない」と錯覚してしまうこともあります。これは、由々しき問題です。
◆骨粗しょう症とカルシウム
少し話が変わりますが、骨粗しょう症という病気をご存知でしょうか。骨がスカスカになってもろくなる病気です。ただスカスカになっているだけであれば生活に支障はありませんが、骨がもろくなるとちょっとした衝撃でも骨折しやすくなります。
特に、大腿骨骨折、いわゆる脚の付け根の骨折のリスクが高くなります。大腿骨骨折は寝たきりになる原因のワースト2に挙げられており、予後がよくありません。
骨は常に破壊と形成を繰り返していますが、通常は両者のスピードが同じであるため、骨の強度は一定に保たれています。ところが、女性ホルモンのバランスが崩れるなどの理由で破壊のほうが早くなってしまうと、骨がもろくなり、骨粗しょう症になります。
また、骨粗しょう症の治療方法はあまりありません。骨量を減らさないようにする飲み薬はありますが、使用して効果が出るのは極初期です。そのため「治療をする」というよりも、「予防をする」ことが大切です。「予防」とは、骨がスカスカにならないように気をつけること。それもかなり早期から始めること。これに尽きます。
骨を強くするには、適度な運動と栄養が必要です。骨の栄養は「カルシウム」と「ビタミンD」、主にこの2つが骨を形成する際に必要になります。骨形成のスピードを遅らせないためには、この2つの栄養素をしっかり摂ることが重要なのです。
ただ、こういうお話をすると「私は毎朝牛乳を1本飲んでいるから大丈夫」という声が聞こえてきそうです。先にお話しした体内時計を鑑みると、実は朝の牛乳は少し残念な飲み方なのです。
◆牛乳は夜飲もう
骨の形成にはもう一つ重要なものがあります。それは「成長ホルモン」です。
成長ホルモンは子どもたちの身体を大きくするために必要なホルモンとして知られています。昔から「寝る子は育つ」といいますが、その言葉通り、成長ホルモンは夜間に分泌が多くなります。
もちろん、成人になった後も、成長ホルモンを分泌して骨の形成を行っています。すなわち、骨の破壊と形成は夜間が活発です。
この説明でピン!ときた人もいると思います。骨を作るのに必要な成長ホルモンの分泌が夜間に多いなら、骨の材料であるカルシウムも夜間に摂るのが理想的。成長ホルモンは睡眠に入って1時間半後くらいから出てくるとされています。だから牛乳は、夕食など寝る前の時間帯に飲むのが◎なのです。
古い映画ですが「ローマの休日」でオードリー・ヘップバーン演じるアン王女がホットミルクを飲んで就寝するシーンがありました。また、日本には銭湯で湯上りに片手を腰に当てて牛乳を飲む、などというオツな習慣もあります。これらはどちらも、非常に理にかなっていたというわけです。
夜の牛乳はカロリーが気になる、という方は、味は落ちますがスキムミルクがオススメ。また、牛乳は苦手という人はヨーグルトでもOKです。
骨粗しょう症の予防は骨量を減らさないことが大切。そのためには1日でも早く予防を始めることが大切です。中高年はもとより、20代、30代の人たちも「まだ先のことだから大丈夫」と思わず、今日から「夜の牛乳」で骨粗しょう症予防を始めましょう。
◇平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。
文=平井 千里(管理栄養士)
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March 25, 2020 at 06:45PM
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