飼料高騰や牛乳の需要減を背景に、県内の酪農家が苦境に立たされている。業界団体は牛乳の消費拡大を呼びかけ、県も支援策を講じているが、昨年は県内の酪農家の約1割に当たる50戸が廃業を余儀なくされた。専門家は、赤字
「千葉県産のおいしい牛乳を配っています」。JR千葉駅ビルの商業施設「ペリエ千葉」で16日、牛乳や乳製品の消費拡大を呼びかけるイベント「冬も牛乳をいっぱい飲モ~!キャンペーン」があった。パック入りの県産牛乳が無償で配られ、通りかかった人々が受け取っていた。
県酪農農業協同組合連合会(県酪連)の高橋秀行会長は、「8月に生乳の取引価格は値上がりしたが、その後も厳しい状況は続いている。寒くなると牛乳の消費は落ち込むが、できるだけ多くの人に牛乳を飲んでほしい」と話す。
千葉県は日本における酪農発祥の地で、現在でも全国有数の酪農県だ。県畜産課によると、県内の昨年の生乳生産量は全国6位の19万2368トン。酪農家の戸数は今年2月現在、全国5位の403戸に上る。
しかし、近年は酪農家の廃業が相次ぐ。県内では昨年、酪農家の約11%に当たる50戸が廃業に追い込まれた。全国平均(5・3%)を大きく上回っている。
牛乳の消費量は長期的に減少傾向だ。酪農家や乳業関係者でつくる「Jミルク」(東京)によると、2000年代前半まで1人あたり30リットル以上あった牛乳の年間消費量は、昨年は25・2リットルまで落ち込んだ。ここ10年以上、1人あたりの年間消費量は20リットル台前半から半ばにとどまっている。
コロナ禍では、学校が休校し、外食産業も営業を休止。これに伴い、牛乳の需要も落ち込んだ。
追い打ちをかけるように、昨年2月にはロシアによるウクライナ侵略が起きた。世界有数の穀倉地帯で起こった戦争で飼料価格は高騰。2020年と比べ、約1・5倍に上昇した。その後も急激な円安の影響で、飼料価格は高止まりが続く。
県酪連の担当者は、「コスト増と収入減の二重苦だ。生乳の取引価格の値上げも、コスト上昇分を補いきれる状況にはない」とため息をつく。
県は酪農家の支援に力を入れる。県内の酪農家に今年7月、飼料代の補助金として乳牛1頭あたり1万5000円を支給した。今年9月には牛乳を使用した和食の料理教室を開くなど、牛乳の消費拡大を促進するイベントも積極的に開く。
県酪連の担当者は「補助金は他県より額が大きく、支給も迅速だった」と感謝する。一方で、「円安によるコスト高もあり、経営の厳しさは変わらない。支援が多ければ多いほどありがたい状況だ」と訴える。
酪農に詳しい鈴木宣弘・東京大教授(農業経済学)は「牛乳の生産コストは高止まりしているが、消費者の支払える額にも上限があり、価格転嫁には限界がある。国は赤字補填など、酪農を守るために踏み込んだ支援策を検討すべきだ」と指摘している。
からの記事と詳細 ( 酪農家苦境廃業1割 飼料高騰、牛乳需要減… - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/l0ibN85
No comments:
Post a Comment