海に漂う大量のプラスチックごみが生物に悪影響を与えていることに心を痛めた東京都内の小学3年生が、学校給食の紙パック牛乳のプラスチック製ストロー廃止を訴え、オンライン上で署名を集めている。すでに2万人以上が賛同した。「みんなの未来のためにも、環境問題について考えてほしい」と呼び掛けている。（小寺香菜子）
ウェブサイトを通じたプラスチックごみをなくす活動について話す堀越えりかさん。右は母カローラさん ＝東京都練馬区で
◆「生き物がかわいそう」環境問題について考えた
取り組むのは練馬区の堀越えりかさん（9つ）。2年生の時に、亀がクラゲと間違えてプラごみを食べて病気になる絵本を読んだ。勉強を進めてプラごみ被害の深刻さを知り「生き物がかわいそう」と胸を痛めた。
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが地球温暖化対策を訴える様子を描いた絵本にも心を動かされ「私も声を上げたい」と思った。
母で大学教授のカローラさん（44）から「環境問題について何かできることはない」と聞かれ、給食の紙パック牛乳のストローを減らすこと思い付いた。
◆学級会で提案「マイコップ週間」を実践
既に2万筆以上が集まった署名活動ページのスクリーンショット（一部画像処理）
学級会で自分の思ったことを伝えてみた。クラスではストローを使わずに済む方法を話し合い、家からコップを持参し牛乳を紙パックから移して飲む方法を考えだした。
9月には「マイコップ週間」と名付け、3年生有志が3週間にわたり取り組んだ。1日当たり100本、3週間で1500本のストローを使わずに済んだ。
周囲の助言もあり、9月下旬には「給食用牛乳のプラスチックストローをなくしたい」と題し、署名サイト「Change.org」に掲載した。「ストローを使わない牛乳パック」への変更を求めている。
◆反響続々「声を上げてくれてありがとう」
サイトには「わたしたち大人も本気で取り組んでいかなくちゃ」「声を上げてくれてありがとう」など温かい声も寄せられている。署名は11月に都教委と練馬区教委に提出する予定。
反響の大きさに「うれしくて、びっくり」とあどけない笑顔を浮かべるえりかさんは「海の生き物が死なないために、変えなきゃいけない。プラスチックストローをなくすために、協力してほしい」と訴える。
◆ストローなしパック、採用は業者次第
ストローを使わずに飲める学校給食用の牛乳パック＝日本製紙提供
国内では最近、ストローを使わずに飲める給食用紙パックが新たに登場した。ただ、普及は一部地域にとどまり、東京都内でも練馬区など多くの区市町村では、今もストローを使う紙パックを使用している。
ストローなしで飲める紙パックは日本製紙（東京）が2020年に開発した。使われているのは東京、埼玉、千葉など13都県の一部。年間の給食用ストロー約14億本のうち2億本の減少が見込まれ、プラごみ約100トンを減らす計算。
国の要領は、都道府県が区市町村を分けた区域ごとに納入業者を決めると定める。紙パックの採用は基本的には業者に任せられる。
東京都の場合、15区域のうち5区域（18自治体）に納入する3社がストローなし紙パックを採用。これに対し、残る10区域（32自治体）の5社はストローを使う紙パックを使用しており、練馬区も含まれる。5社の中にはバイオマスストローに切り替えた業者もあるという。
業者を決める際にストローなし紙パック採用を働きかけることはできないのか。都教育庁に取材すると、国の要領が最低価格を提出した業者を選ぶことになっているとした上で「最低価格の業者がどの紙パックを採用するか次第」（健康教育担当課）と回答した。
都は国に対し、業者を評価する要素に環境への配慮などを加えるよう要領の見直しを求めている。これに対し、農林水産省牛乳乳製品課は「要領は原則であり、各都道府県でプラ削減などを配慮して業者を選ぶことは可能」としている。
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